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【レポート】小学生による「地域の防災まち探検」:災害時になにができるかまちあるき!その2

 まちをいろいろ探検しして、いよいよ小学校の校庭わきに進んできました。小学校は、災害が起きた時に最初に開設される指定避難所になっています。

校庭の防災設備と拡声器

 校庭のわきには防災用の拡声器が設置されています。私たちが住む市には200余りの拡声器が設置されているそうです。小学校区は50前後ですので、その4倍以上ということになります。

 今まで全然気に留めませんでしたが、見上げてみると遠くまで聞こえそうな高い柱に取り付けられています。

 ここからは定時のサイレンや災害情報が流れる仕組みですが、風向きなどで聞こえにくいこともあるため、非常用の情報伝達のための電話番号も教えていただき実際にその音声も聞いてみました。録音した音声が流れてきますが、24時間利用できるのだそうです。

電話番号は、語呂合わせでおぼえやすいようになっていました。いざという時に、確実に情報が届くような工夫がなされていることに安心しました。家に帰ったら早速おうちの人に教えて番号登録してもらいましょう。

住居表示の看板にも工夫が

歩く道すがら、電柱に、ここが何という町名で、避難所はどこで、現在地はどこかわかる略図が書いた長方形のプレート、看板が取り付けられています。

これは、2018年開催の国体に向けて整備されたのだそうです。デザインは黒地に白い文字。赤いアクセントも施されていました。当時、地元の大学生が手掛けたユニバーサルデザインになっているのだそうです。これを見れば自分の地域外で被災してもどこへ逃げればよいのか一目でわかるようになっていますし、もちろん旅行に来ている人にもわかるようになっています。

プールの水が「消火用貯水」に

校庭のわきにあるプールは、災害時の消火活動に備えて夏でなくても貯水されています。もしプールの水が空になるときには小学校の校長が消防機関へ連絡することになっているのだそうです。校長は、実は責任の重い仕事を任されているんですね。

 また、学校の敷地の出入口は普段ほとんど施錠されていますが、プールの横の通用門だけはいつでも使えるように開かれており、避難時にも活用できるようになっています。プールの手前にはマンホールトイレ用の蓋もあり、災害時には、この上に便座を設置して、さらに専用テントで囲い、トイレとして使います。流す水はプールから引いてきます。もちろん車いす対応の広めのトイレもできるようになっていました。トイレのマンホールは地下で下水と繋がっていますが、破損などで下水に流せないことには止水して使用することもできるともことでした。

いざというとき、ちゃんと用を足せるかな・・・。排泄はだれにとっても切実な問題です。我慢すると体を壊してしまいますから。「実際に組み立ててみたかった」という声も聞かれました。地元の自主防災会連絡協議会の方が管理されているので、ぜひ皆さんでやりましょう。

校庭の防災備蓄倉庫の中身を見学

 防災備蓄倉庫には、自家発電機、毛布、リヤカー、段ボールトイレ、避難所用段ボール間仕切り、食料、それに水などが備えられていますが、それでも約100名分程度の物資しか収納されていません。多くの地区民が避難することを想定すると全員分には全然足りませんので、各自宅での備蓄が重要であることも再確認されました。ちなみに避難所開設時の一人当たりのスペースは畳一畳分くらいだそうです。

非常用貯水装置と携帯ポリタンク

備蓄倉庫の隣には非常用貯水装置があり、地下の水を手押しポンプで汲み上げる仕組みです。この地区では、3日分と想定して5000人分の水が用意されています。

一日に人は3リットル必要とされているのでとてもたくさんの量の水です。それでも全地区民は5000人以上ですので、もし全員が被災した場合には不足しますね。そもそも全員が被災する想定にはしていないそうです。水は大変重要です。それぞれの家庭での備蓄がいかに必要か認識を深める機会となりました。

非常食の試食の大切さとトイレのこと

 こうしてまちの様々な危険個所と備えを見学した探検の最後に、備蓄用の水やビスケット、レトルト食品を講師からいただきました。

 講師から皆さんへのお願いとして、これをこのまま保存しておくのではなく、おうちに帰ったら一度食べてみてほしい、とのこと。人は食べたことのある物は受け入れやすいのだとか。非常時に突然、乾パンやレトルト食品、アルファ米などを食べるのではなく、普段から食べてみて、味付けの確認や、自分の体にどんな変化が起こるかを知っておくのは大切なことです。

 ちょうど、以前のイベントで作っておいた段ボールトイレもみてもらい、実際に座ってもらいました。子どもも大人も最初はおっかなびっくりでしたが「意外と丈夫!」と驚きつつも、やはり、紙製ですから、半永久的に使えるわけではなく水にも弱いという説明を聞き、自宅でもいくつかの段ボールなどの備えをしておくことが大切だと感じてくれたようです。万が一、3m浸水したら、一階にしかトイレのないお宅は大変困ることになりまから。

まとめ

 今回の「防災まち探検」は、小学生にとって、身近な場所で防災意識を高める貴重な学習機会となりました。普段は何気なく見たり、あるいは見落としがちなまちの風景が、災害時には大きな意味を持つことを再発見できました。

 また、改めて自分の命は自分で守ることを意識し、避難所にいくことだけでなく、自宅の備えを高い階へ逃げる「垂直避難」も考える必要があるとわかりました。もし、自分の家が平屋建てだったら、ご近所さんにあらかじめ頼んでおいて避難させていただくようなことも真剣に考えないといけませんね。

 今後も、このような地域の活動を通じて、防災意識を広めていきたいと思います。同時に、子どもたちに気づきの機会をいろいろ与えられたらいいと思います。

案内人りく