もともと私は、長年あるアイドルグループを応援してきましたが、「timelesz(タイムレス)」にはそれほどの興味がありませんでした。確かに、加入や脱退が話題になるたび耳には入っていましたが、それ以上は特に関心を向けていませんでした。
そんな私が先日、中学生向けのダンス体験会に関わる機会があり、その時の印象がきっかけとなって、「timelesz(タイムレス)」の新メンバーオーディション「timelesz project」に目が向くようになったのです。気がつけば、プロとしての覚悟や成長がどのようにアイドルを形作るのか、そのプロセスに深く引き込まれていました。
私が「timelesz(タイムレス)」オーディションに興味を持った理由の一つは、彼らが従来の選抜過程とは全く違う形で新メンバーを迎え入れようとしている点です。
これまで、アイドルグループでは選考や配役はプロデューサーが行い、若いjr(ジュニア)たちがステージで経験を積みながら選抜されるというのが通例でした。しかし今回は、既存メンバーが「自分たちの仲間を自分たちで選ぶ」という責任ある立場に立ち、新たな視点から仲間の選考に携わっています。
彼らもかつてはジュニアとしてステージに立ち、先輩たちの後ろで背中をみて踊りながら自分の居場所を作り上げてきた側です。だからこそ、新たな挑戦者たちと向き合う中で、かつての自分と重なる部分も多いのではないでしょうか。
私が動画を視聴し、特に心動かされた場面があります。それは、既存メンバーが、候補者に対して言いたいことが言えない状態であることを、見学に来ていた先輩アーティストに簡単に見抜かれ、問題提起される場面です。
「この世界の厳しさを(今のうちに)ちゃんと伝えないと。あとで、こんなはずじゃなかった、と思うのでは(遅い)…。これから10年、それ以上一緒にやっていく覚悟があるかを早い段階できっぱり言うべきだ」と、実にシビアな助言をする先輩。その言葉を神妙に聴いている、既存メンバー…。
選ばれる責任と選ぶ責任、そのどちらもが同時に見えてくるこのオーディションは、候補者のみならずメンバー自身の成長と覚悟も映し出しており、「プロになる」とはどういうことかをあらためて考えさせられます。また、一人ひとりの人間の将来を左右する大事な局面を垣間見せてもらっているのです。
さらに、このオーディションがNetflixネットフリックスで公開されることには、所属事務所の新たな戦略や意図があるように感じられます。ここ数年、問題を抱えつつ旧態然とした体制を長期にわたり続けてきたことが猛批判されている中で、「timelesz(タイムレス)」のように透明性を重視した選抜プロセスを映像として配信することで、組織の刷新やファンとの新たなつながりを模索しているのかもしれません。視聴者にとっては、アイドルの成長や変化をより身近に感じられる機会でもあり、これはこれからのエンターテイメントに求められる姿の一つなのではないでしょうか。
このオーディションを見ていると、私が中学生のダンス体験会で感じた「プロを目指すということ」や「組織の一員として成長していくこと」「チャレンジする大切さ」などが重なって見えました。体験会で目にした中学生たちが、最初のきっかけは何にしろ、とくかく「やってみて」仲間や自分の成長のために一生懸命に踊る姿には、未来への希望が宿っていました。これと同じように、「timelesz(タイムレス)」のオーディションにも、ダンス未経験者のチャレンジや、仲間と共にプロを目指し、さらに大きな目標に向かっていく彼らの挑戦が詰まっています。
オーディションが進む中で、新メンバー候補と既存メンバーの「プロとしての覚悟」が鮮明に浮かび上がり、そこには純粋な憧れだけでなく、実力を試されるプレッシャーも見え隠れします。これからのアイドルの在り方に対する新しい提案とも言えるこのプロジェクトは、私たちにとっても「プロフェッショナリズム」を見つめ直すきっかけになっているのかもしれません。
そして、この映像をみているうちに、単なるエンタメの世界の事だけでなく、自分が今まさにかかわっている仕事の、仲間との有り方にも考えが及ぶようになりました。
「自分はちゃんと仲間として同僚を見ているか」「自分はちゃんと仲間と対話しているか」「自分たちは時には厳しいことも言い合える状態か」…
いろいろ思いめぐらすとき、うまくいっていない時は必ずコミュニケーションが不足している、と実感させられました。アイドルのプロジェクトがアイドルやエンタメの未来にどう影響するか、これからも見届けていきつつ、自分たちにも何らかの得るものがありそうな気がします。