Categories: エンタメ

【ドラマ考察】最終回「海に眠るダイヤモンド」レビュー|神木隆之介の新境地と個人的な違和感

TBS日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」がついに幕を下ろしました。まずは、神木隆之介さんの存在感に拍手を送りたいと思います。子役時代から注目されていた彼は、その童顔ゆえに「学生服が似合いすぎる俳優」との印象もありましたが、今回の作業服姿は清潔感と昭和感を絶妙に引き出しており、青年の魅力を見事に表現していました。個人的にはこれまでで1番のはまり役だと感じました。

神木隆之介の魅力と新境地

神木さんといえば『るろうに剣心』や「バクマン」「桐島、部活やめるってよ」など映画での活躍が思い出されますが、個人的には「どこか大人になりきれないキャラクター」と感じていたのです。

 しかし、本作ではナレーションを担当する一方、演者としてもキャラクターに溶け込み、俯瞰的な視点で彼独自の味を引き立てていました。しかも、一人二役!一方では正義感あふれる昭和の青年、一人は廃退的なホスト役です。端島パートのナレーションは滑舌が良く、聞き取りやすい声も、物語全体を支え引き締める重要な要素になっていました。


最終話に感じた違和感と答え合わせ

本作が映画「タイタニック」のオマージュであることは視聴者の間でも話題になっていました。しかし、個人的に最終話ではいくつか感情移入しづらい展開が見られたのも事実です。

  • 鉄平と朝子の幻想的なプロポーズシーン
    ファンタジーの要素が強すぎて現実感が薄れ、感情移入が難しかった。現実の朝子の結婚や虎次郎の存在、彼との家族について肯定したくても気持ちがかけ離れてしまいがちになった。
  • 澤田が「誠」であるという事実
    衝撃の展開として受け入れる人も多いでしょうが、個人的には急展開過ぎて消化不良な印象でした。朝子を守り恩返しをするという必然はあるのでしょうが、もう一度全体を見返さないと整理がつきにくい
  • 「海に眠るダイヤモンド」の象徴
    表題の一部、英訳が「オン・ザ・シー」となっていることから、ダイヤモンドが端島を指していると推測はしていましたが、「端島」という存在そのものが故郷への愛着、生きる力の源、現代の礎の象徴等を表現したのだと思います。また、挿入歌「根っこ=ルーツ」がとてもマッチしており、詩の意味も最後の最後でピタッとハマった感じを受けました。

賛否両論を呼ぶ結末

 鉄平のプロポーズは「自分の叶えられなかった想いへの答え」として理解できる一方で、虎次郎との結婚やその後の家族を築く未来への否定として受け取る視聴者もいるかもしれません。この点については「?」と感じた方も少なくないでしょう。かくいう私は、ちょっと割り切れない感じを受けてしまいました。朝子が一途な思いを抱いていたにもかかわらず、意外にあっさり結婚して新しい生活で成功していることが、女性のしたたかさのようなものを表現していたと思います。

現代パートの伏線

 宮本信子氏は現代パートの最初から全体的にかなり気持ちが揺れている場面が多かったですね。

 これは、やはり、最近になって端島時代の鉄平のノートを読んでしまったことで自分の知らない事情のあれこれを見てしまったからでしょうか。。。。それにしては、苦悩の部分があまり詳細には描かれていません。ノートには書いてなかったとも取れるし、その辺は深く掘り下げていないので、あまりよくわからない部分ではあります。一旦は現在の家族への嫌気を前面に出していましたが、過去を美化していたのでしょうか


ミステリー要素とキャラクター描写

このレビューはあくまで個人的な感覚として読んでいただきたいのですが、最終話を振り返ると、「もう少しミステリー要素を際立たせてもよかったのでは?」と思う部分がありました。例えば、澤田の正体や賢将の息子の存在が案外あっさりと明かされた点です。とはいえ、これ以上複雑にすると陳腐になってしまう危険性もあり、この辺りは演出側の意図が反映された結果でしょう。

一方で、清水尋也さんの演技は非常に光っていました。閉山の苦労を背負い、心身ともに消耗しきった彼の描写は、逃走中にもかかわらず綺麗すぎる神木さん演じる鉄平との対照が印象的でした。この「綺麗さ」については、鉄平が過去に縛られ、朝子への一途な想いとともにどこか浮世離れした存在として描かれているからこその表現だったのではないかと感じます。


80代の若さと世代を超えたメッセージ

宮本信子さんが演じた高齢のキャラクター自体は印象的でした。現代社会においては80代でも実際皆様若くあられ、彼女も違和感はありませんでした。そして同時に、「いつまでも志を持てば、何にでもなれる」というメッセージを強く感じました。この点は視聴者に勇気を与えたのではないでしょうか。


過去の名作との共鳴

最終回で描かれた、鉄平の家から見える端島のコスモス畑の描写には、倉本聰さんの「風のガーデン」を彷彿とさせるものがありました。そして、その作品にも若き日の神木隆之介さんが出演していたことを思い出し、どこか感慨深くなりました。


まとめ

「海に眠るダイヤモンド」は、物語の深さや演出の美しさで高い評価を受けつつも、最終話では私のように一部の視聴者にとって解釈の分かれる展開となりました。

しかし、特に神木隆之介さんの新たな一面が際立ったドラマでもあり、俳優としてさらなる成長を期待させる内容でした。今後の彼の活躍がますます楽しみですね。もう一人、清水尋也さんも格が上がったのではないでしょうか。最後になるにつれ繊細な演技がとても光っていました。またこの作品は、映画「タイタニック」のオマージュとして壮大な物語を展開しながらも、俳優陣の魅力や個性を際立足せることに成功したと思います。

最後に、読者の皆さんはどのシーンが一番心に残りましたか?

追記

私は最初からTVerで視聴しましたが、リアルタイムで観た家族が、2回目にTVerで視聴し、「あれ?なんかせりふが増えてる」と言っていました。

ネットで調べてみたところリアタイでは「放映時間の関係で泣く泣く削ったシーン」などもTVerで2話に分けてきちんと全10話にしていたようです。このドラマは他の動画などによると、放送時間について様々な受難をうけたようで、選挙で一週休みになったり、野球で開始時間が遅れたりしたそうですね。

考察動画も盛んにでていましたが、ついに終わってしまい、少しだけロス状態です。また、新しく観たいドラマが出てくることを祈っています。

案内人りく