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🏰ホテル川久に泊まるということ 〜パンダと私と、建築と〜

和歌山県・白浜町といえば、多くの人がまず思い浮かべるのが「アドベンチャーワールド」と、そこで愛されてきたジャイアントパンダたちの存在かもしれません。
実は私が、白浜の名門「ホテル川久」に宿泊したのは、まさにそのパンダたちが中国へ返還される前日のことでした。

🐼 パンダがいなくなる白浜へ――思いがけないご縁で

この春、30年以上にわたって飼育されてきた白浜のジャイアントパンダたちがすべて中国に返還されるというニュースが報じられました。その余波もあってか、白浜町の宿泊施設では一時的に価格が見直され、これまで「いつか泊まってみたい」と思っていたあの川久が、私にもなんとか手の届く料金になっていたのです。

まるで、パンダたちが最後にくれた“贈りもの”のようなタイミング。偶然とはいえ、不思議なご縁を感じながら足を踏み入れたその場所は、想像以上の体験を私にくれました。

🏰 豪奢と静寂、そして本物の風格

「ホテル川久」という名前は、かねてから耳にしていました。YouTubeでも紹介されることが多く、“まるで宮殿”“美術館のようなホテル”と語られるその姿には、ある種の夢のような憧れを抱いていました。

しかし、実際にその空間に身を置いてみると――
想像の中の“豪華さ”など、簡単に飛び越えていくような圧倒的な存在感がありました。

広々としたロビー、22K金箔が施された天井、煉瓦造りの重厚な壁面、手作業で仕上げられた細やかな装飾。館内に足を踏み入れると、そこには「ラグジュアリー」とは別の言葉がふさわしい、“文化としての重み”が静かに息づいていました。

チェックイン当日は混雑もなく、静けさに包まれたホテル全体が、私にだけ特別に開かれているかのようにすら感じられたのです。

🧱 建築好きにはたまらない、“造る”という行為の結晶

建築が好きな私にとって、この滞在はまさに夢のような時間でした。
使用されている素材や技術には、スペインやイタリアの伝統技法が随所に見られます。瑠璃瓦47万枚、英国製煉瓦140万個、金箔、漆喰――どれもが単なる装飾ではなく、職人の魂と時間の積み重ねです。

特に感動したのは、その“本気”が空間全体からにじみ出ていること。装飾や設備はもちろん、ひとつの通路、壁の角度、光の入り方に至るまで、「このホテルを造った人々の美意識」が伝わってくるのです。

一時は廃業も経験したと聞きましたが、そうした歴史をも内包したこの場所には、派手さだけでない、静かな説得力があります。

🏰 歴史とコンセプト

  • 「河久」から「川久」へ
    大阪船場の商人・河内屋久兵衛によって開かれた旅館「河久」が源流。その後、戦中・戦後を経て1949年に屋号を「川久」と改め、30年前に現在の豪華なホテルへと進化しました booking.com+14note.com+14ikyu.com+14
  • “アートの美術館ホテル”としての設計
    1993年の開業に際し、世界中の一流職人・建築家が集結し、オリジナル性を追求。ムラノ トウゴ賞の受賞歴もある建築作品です 。

✨ 建築とインテリア

  • 瑠璃瓦と煉瓦の外観
    北京紫禁城と同じ「老中黄(ろうちゅうこう)」の瑠璃瓦を47万枚使用し、73種類・140万個の英国IBSTOK社製煉瓦で花びら文様が描かれた城壁 tabiiro.jp+2hotel-kawakyu.jp+2travel.rakuten.co.jp+2
  • 金箔ドーム天井&装飾
    エントランスには22K金箔を貼ったドームが輝き、出窓にはイタリアとフランスの職人による装飾、土佐漆喰も高知城と同材を用い50人が一日で塗り上げました tabiiro.jp+2hotel-kawakyu.jp+2ikyu.com+2

🛏 部屋と施設

  • 全室スイート、全室オーシャンビュー
    85室すべてがスイートタイプ・タナベ湾を一望できる造り。プレジデンシャルスイートは247㎡で専用テラス・露天温泉付き booking.com+7hotel-kawakyu.jp+7hotel-kawakyu.jp+7
  • スパ・温泉施設
    男女入れ替え制の「ロイヤルスパ」「悠久の森」など多彩な温泉施設。屋内プールやジャグジー・サウナも備えた充実の癒し空間 hotel-kawakyu.jp+3shirahama-ryokan.jp+3kinan-art.jp+3

🍽 美食体験

  • 「王様のビュッフェ」
    紀州の食材を中心に、シェフがライブで仕上げるフレンチ&和食スタイルの豪華ビュッフェが人気 shirahama-ryokan.jp+1youtube.com+1
  • 世界屈指のワインセラー
    かつて東洋最大・世界でもトップクラスと言われた25,000本のワインを所蔵していた歴史あり kinan-art.jp

🖼 川久ミュージアム

  • 2020年開館の私設美術館
    館内コレクションを鑑賞できる「川久ミュージアム」が好評。海外アーティスト作品や金箔ドームなど見どころ満載 jalan.net+6prtimes.jp+6ikyu.com+6
  • 料金&アクセス
    大人1,000円、高校・大学生800円。営業時間10:30〜18:00(最終入館30分前) 宿泊客でなくても利用できます。 nankishirahama.jp+2prtimes.jp+2museum-kawakyu.jp+2

🌿 パンダロスを癒す、次の楽しみへ

長年白浜の象徴だったパンダたちがいなくなった今、町の空気には少しだけ静けさが漂っているようにも感じます。けれど、その静けさの中だからこそ出会えるものもあるのかもしれません。

日本には、直島の「地中美術館」のように、アートと建築に身を委ねる滞在型施設も増えています。
“パンダロス”を癒す旅の先には、まだまだ知らない“心が動く風景”があるはずです。

そして私にとって、「ホテル川久」はその入口となるような、特別な一夜でした。

案内人りく