ジムのトレーナーに聞いた「人生を預かるジム」──逆境を越えてたどり着いた矜恃(きょうじ)

「人生を預かるジムです」
そう話したのは、私が普段通っているジムのトレーナーさん。
いつものように会話していたなかで、ふとこぼれたその一言に、私は強く引き込まれました。

今回ご紹介するのは、その彼にPR動画の出演をお願いし、定休日にも関わらず快く協力していただいたことをきっかけに、彼の半生と仕事への矜恃──つまり、プロとしての誇りと覚悟──に触れた記録です。

「ジムはダイエットを目標にするところではない。」

いきなり、パンチを喰らいます。
大方の人がダイエットを目標に入会するけれど、それは結果として自然と出てくる答えであって、人生が好転するような転換が叶えられる可能性を持っているのだとか。

そんな視点を持つ彼の言葉は、特に中高年の方にとって、これからの身体との向き合い方に小さなヒントを与えてくれるかもしれません。


■ ボクシングで日本3位──「このままじゃいけない」と思った瞬間

彼の人生は、最初からトレーナーを目指していたわけではありません。
高校はスポーツ覇者を目指し県外に進学。やがてプロに手が届きそうだとボクシングに転向。日本3位という成績を残します。

「日本一になったらプロになろう」と目標にしていた「日本一」には届かず、プロ転向は断念。
「このままではダメだ」と思い、就職の道を選びますが、しばらくは職を転々としました。


■ トレーナーとして頭角を現すも──「会社のためにも辞めた方がいい」

やがて、大手のジムに就職。そこで彼は、自身の持つダイエット理論や運動指導の方法を活かして、系列店内で一位の成績を収めるまでに。

ただ、そのやり方は、会社の方針とは違っていました。
「独学で学んできた方法の方が、目の前のお客様には合っている」
そう感じながら、自分の信じる方法で結果を出し続けました。

でもあるとき、ふとこう思ったそうです。
「このままでは、会社に迷惑がかかるかもしれない」

評価されていたにもかかわらず、会社にとって「扱いにくい存在」になることを避けたかった。
だからこそ、彼は独立を選びました。


■ 紙切れ一枚から始まったジム

開業当初、たった紙切れ一枚を税務署に提出して営業が始まります。

途中、移転計画などがあったらしいですが、おそらく、コロナの影響もあり、元々の店舗を拡幅することで今は営業を続けています。
それでも少しずつ利用者が増え、今では予約が取りづらいほどの人気ジムになっています。

もちろん、その裏にはきっとご両親の支えや、環境的なサポートもあったのだと思います。
彼の醸し出す「上品さ」や「落ち着き」は、そうした背景からにじみ出ているように感じられます。


■ 「嫌味にならない」のは、裏がないから

彼と話していると、ときどきドキッとするようなストレートな言葉が出てきます。

「管理栄養士より詳しいこともあるかもしれません」
「好きなことしかやりません」
「興味ないことは知らないです」

もし他の誰かが言えば、少し鼻につくような言葉かもしれません。
でも、彼が言うと、不思議と納得できる。

なぜか?
まったく裏がないからです。

言葉を飾らない。無理に良く見せようとしない。
正直に、真っ直ぐに、自分の信じる道を話してくれる。
その姿勢こそが、信頼を生んでいるのだと思います。


■ 「動画で伝える」の難しさと、それでも伝えたい想い

今回、彼の言葉や空気感を少しでも届けたくて、PR動画の制作をお願いしました。
普段は1回6,000円(税別)のセッションを提供している彼が、定休日に時間を割いてくださったこと自体、とてもありがたいことでした。

でも実際に映像で伝えるとなると、「彼の誠実さ」がどれほど届くのか、私にも不安がありました。
彼の魅力は、技術や知識の多さではなく、「人としての信頼感」だからです。

それは、会ってみないと分からない。
だからこそ、こうしてブログに記しておきたいと思ったのです。


■ 「人生を預かるジム」の意味

彼のジムには、ただ筋肉をつけたい人だけでなく、
「体力の衰えを感じ始めた」
「このまま年を重ねるのが不安」
といった、いわば“生活と人生の不安”を抱えた方々が訪れます。

「人生を預かるジムです」
その一言には、そうした不安を正面から受け止める覚悟が感じられます。
彼は、「体を鍛えること=人生を整えること」と捉えて、毎日真摯に向き合っているのです。

案内人りく