みなさま、TBSドラマ『御上先生(みかみせんせい)』をごらんになっておられますか?
このドラマは、単なる学園ドラマではなく、もっと深く掘り下げている、具体的には、現代の教育が抱える課題や改革の可能性について描いた作品です。まだ、この段階で、3話までしか公開されていませんが、先日、TBS主催の公開イベントが開催され、教育専門家たちがドラマのテーマをもとに議論を交わしておられました。本記事では、その内容を配信している動画を整理しながら、ところどころ私の感想を交え、日本の教育の現状と未来について少し考えていくことにします。
(参考動画)
日曜劇場『御上先生』から見る“教育” 課外授業 ~教育論と表現論を知る~【TBS】
イベントの概要
このイベントでは、本ドラマの学校教育監修を務める工藤勇一さん、 教育監修を務めるIPU環太平洋大学特命教授の中山芳一さん 、そしてTBSひるおび金曜コメンテーター白井智子さん の3名でのパネルディスカッションです。
【現代の教育に必要なこととは?】 【アクティブリコールの活用法】 の2つのテーマについて3名が詳しく解説されています。 現代教育を“リビルド”(再構築)していくにはどうすればよいのか? “自主性”と“主体性”の違いとは? “教育”に視点をおいて『御上先生』を新たな目線で楽しめます(TBSの説明から抜粋)
1. 日本の教育と前例主義の壁
イベントでは、現代の日本の教育が前例主義に縛られていることが指摘されました。学校も教育行政も「これまでこうしてきたから」と変化を拒む傾向があり、それが改革を阻んでいます。
ドラマでもこの点が強調されています。
御上先生:「バージョンアップではなく、リビルドが必要だ。」
つまり、単なる部分的な修正ではなく、教育システム全体を根本から見直し、作り直す必要があるという主張です。日本の教育は、子どもたちのためを思って作られた仕組みであるものの、世界と比較すると独自性が強く、課題も多いことが指摘されました。
2. 世界と日本の教育の違いと歴史的背景
日本では、高校受験や大学受験が大きな比重を占め、試験の点数が進学や将来を左右する仕組みになっています。しかし、欧米では高校受験がなく、大学進学もペーパーテストの点数だけでは決まりません。
例:欧米では総合型選抜が主流
- 日本では「1点でも多く取れば合格」という仕組みが一般的。
- 欧米では、エッセイ(論文)、面接、課外活動などを総合的に評価する。
さらに、日本と欧米の教育には以下のような違いがあります。
- 不登校の概念:日本では不登校が社会問題として扱われますが、欧米ではそもそも「不登校」という概念がほとんどありません。例えばアメリカでは、家庭学習(ホームスクーリング)が認められており、学び方の選択肢が多様です。
- 学力の評価方法:日本では知識量やペーパーテストの点数が重視されますが、欧米では「リーダーシップ」「プレゼンテーション能力」「創造性」といった非認知スキルも重要視されます。
- 学校の役割:日本の学校は「生活指導」も含めた一貫管理型ですが、欧米では「学びの場」としての機能が重視され、カウンセリングや支援は外部機関と連携することが一般的です。
また、歴史的な観点から見ると、日本の教育は明治時代以降、富国強兵政策の一環として「統一された価値観」を重視する形で発展してきました。戦後も、その流れが続き、試験重視・詰め込み教育の傾向が強まりました。一方、欧米では個人の多様性を尊重する教育改革が進み、体罰文化も早期に撤廃されました。
このような違いが、日本の「詰め込み型教育」を助長し、生徒たちの学びのあり方を狭めていると考えられます。
3. 教育現場の変遷—体罰と指導のあり方
40年以上にわたり教育現場で指導してきた工藤氏は、日本の教育がどのように変化してきたかを語りました。
- 過去の教育:体罰が当たり前だった時代。教師の権威が強く、指導は命令型が主流だった。
- 現在の教育:人権意識が向上し、教師の管理は緩和されたが、過保護な指導も増えている。
- 問題点:子どもに考えさせる前に答えを教えてしまう傾向が強まっている。
工藤氏は、「体罰がなくなったこと自体は良いが、今の教育は過度に手をかけすぎている」と指摘。子どもが自ら考え、判断し、行動する機会を奪ってしまっているのではないか、と警鐘を鳴らしました。
4. 「学び方」を見直す—アクティブリコールとは?
イベントでは「アクティブリコール」という学習法も話題になりました。これは、ただノートを読むのではなく、「思い出す」という作業を取り入れることで、記憶の定着を高める方法です。
実験結果によると…
- 何度も復習したグループよりも、積極的に思い出す練習をしたグループの方が、学習効果が高かった。
- 思い出すという作業をした人と、「マインドマップ」を作った人では、思い出すという作業をした方が学習効果が高かった。
ドラマでも、御上先生が「ただ板書を写すのではなく、自分で考え、問いを立てることの重要性」を生徒たちに教えるシーンがあります。このような学び方の変革が、今後の教育には求められています。
5. 「自主性」と「主体性」の違いとは?
また、「自主性」と「主体性」の違いについても「似て非なるもの」と工藤氏は丁寧に説明されています。「自分の頭で考える」ことについてももう一度整理することが必要と感じました。
工藤氏が強調したのは、「自主性」と「主体性」は異なるという点です。
- 自主性:周囲の期待に応えて、自ら進んで行動すること。
- 主体性:自分で考え、選択し、行動すること。
ドラマの中で、御上先生は生徒に「なぜ?」と問いかけ続けます。これは、生徒たちに主体的な学びを促すためです。
例えば、授業の中で「なぜこの方法で学ぶのか?」と生徒が尋ねる場面があります。これは、欧米の教育現場では当たり前の光景ですが、日本ではまだ珍しい文化です。
主体性を育むには、単に与えられたものをこなすのではなく、自分で考える力を養うことが重要だと、工藤氏は述べました。
わたしも、周りの大人の一人として「過剰に手伝っていないか」「先回りしていないか」など考えさせられる内容でした。
6. 未来の教育—「考える力」をどう育むか
日本の教育は、今後大きく変わっていく可能性があります。
- 受験制度の変化:大学入試では、知識の暗記だけでなく、考える力や表現力がより重視されるようになる。
- 多様な学びの場の拡充:フリースクールやオンライン教育など、学校以外で学ぶ選択肢が増えている。
- グローバル社会に適応する力の必要性:異なる価値観を持つ人々と協力しながら課題を解決する力が求められる。
特に「考える力」は、単に知識を詰め込むのではなく、問いを立て、自ら答えを探し、実行する能力として重要視されています。
7. まとめ
TBSのドラマ『御上先生』は、教育の現場で今まさに起こっている課題をリアルに描いています。イベントの議論を通しても、以下のポイントが改めて浮き彫りになりました。
✔ 前例主義の限界—今こそリビルドが必要。 ✔ 世界との違い—受験制度や学び方の変革が求められている。 ✔ 教育の歴史的変遷—体罰・権威主義からの脱却とその影響。 ✔ アクティブリコールの導入—単なる暗記ではなく、思考力を鍛える学び方。 ✔ 未来の教育—個々の能力を伸ばす多様な学びが主流に。
教育改革は、一朝一夕には進みません。しかし、今の学校教育のあり方を考え直し、より良い未来をつくるために、私たち一人ひとりが「問いを立てる」ことが大切なのではないでしょうか。
まだまだドラマは続きます。今からでも十分全編みられますので、興味があれば視聴をお勧めいたします。