先日、地元の温泉に一泊し、翌日は永平寺を観光してきました。永平寺は10年ほど前から再開発を進め、かなり変わっている、と知人から聞いたのがきっかけです。

のんびりとした時間を過ごすつもりが、思いがけずクルーズ船による訪日客の団体と一緒になり、観光の現場で感じることが多い旅となりました。

福井県にはまだまだ知られていない魅力が数多く眠っており、それをどう発信し、どう受け入れるのか。温泉宿での会話、永平寺での観察、今庄での再発見から、「埋もれた魅力を掘り起こす」ためのヒントが見えてきた気がします。

名刹・永平寺と「観光地化されすぎない」魅力

永平寺は、曹洞宗の大本山として静かで厳かな空気が漂う、まさに「名刹」。その風格は、観光化の波にも流されず、独自の空気感を保っています。

しかし、クルーズ船で訪れていた外国人観光客に対するガイドの説明は、横で聞いている限りごく簡単なもののようでした。限られた時間の中では仕方のないことかもしれませんが、「せっかく来てもらったのに、伝えきれていないのでは」という思いも。

以前は、修行されている雲水が適宜参拝客を集めて説明をして回ってくださいましたが、少子化やコロナの影響で、修行僧も減少し、今はそういった取り組みはされていないようでした。しかし、せっかく福井県屈指の観光地であり、日本でも希少な修行の場としての独特な存在感のある名刹を訪れた方、特に外国人の方にはその良さを分かっていただきたいけれど、十分な説明もなく、七堂伽藍を歩くだけでは、正直「疲れたな」という感想しか残らないのでは?と、はたで見ていてなんだか歯がゆい想いがしました。

 マンパワーの補足こそ、ITの出番です。

 例えば、境内各所に多言語対応のQRコードを設置することで、より深い学びや理解が可能になります。こういった小さな工夫は、行政や観光協会がリードすれば十分に実現可能で、訪問者にとっても大きな価値をもたらすはずです。これは永平寺だけにまかせるのではなく、行政も関わってほしいところです

温泉宿に学ぶ、「選ばれる」ための工夫

 この点、今回宿泊した温泉宿は、しっかりと情報発信に力を入れています。SNSやホームページを活用し、毎日のようにユニークな動画などを発信することで地域の魅力や宿のこだわりを継続的にPR。その努力が実を結び、昨年はプロ野球・読売ジャイアンツの公式戦時の宿として、入札などではなく、球団の方からオファーを受けたそうです。

 お風呂で偶然ご一緒した首都圏からのお客さまは、「SNSで見て、ここに泊まりたいと思い、2泊しました。とてもごはんがおいしくて、ゆったりしたいいところですね」と話していました。おそらくSNSなどでの発信がきっかけとなり宿泊の決め手になっているのでしょう。観光客を「受け身で待つ」のではなく、「自ら見つけてもらう努力」が今、求められているのだと感じました。

今庄での発見と、もっとPRできる可能性

週末には東京からの知人を南越前町今庄地区に案内しました。北国街道の宿場町としての風情と素朴な町並み、地元食材を活かした料理、なによりも「人のあたたかさ」に感動されたようで、

「食べ物も景色もいいのに、あまり知られていないのがもったいない」
という言葉を残してくれました。

地元の私たちにとっては当たり前の日常も、外から見ると魅力の宝庫。こうした「埋もれた魅力」に光を当てるには、やはり地域全体でのPRと発信力の強化が不可欠です。

高齢旅行者に贈る「地元と外国の交流」をテーマにした観光

 永平寺で一緒になった団体のように、最近、敦賀港に停泊するクルーズ船には、特に高齢の方々が多く乗船されているのをよく見かけます。長期の団体旅行となると、どうしても高齢者の割合が高くなるのは洋の東西を問わず同じなのでしょう。この方々がどんな思い出を持ち帰るか、楽しんでいただけるか、それが観光業にとって非常に重要なポイントだと感じます。

 一つ提案したいのは、「地元と外国の交流についての豆知識」を案内に盛り込むことです。たとえば、永平寺を訪れた外国の方々に、仏教や曹洞宗の起源を説明するだけでなく、日本と他国の仏教や宗教文化との違いや、地元敦賀と海外のつながりについて触れてみる。こういった内容は、観光そのものを超えて、異文化交流の一環として楽しんでいただけると思います。また、建物の重厚さや禅宗独特の仏堂の装飾の豪華さなどはそれなりの理由があり、きちんと説明すれば「良いものを見た」ときっと満足していただけるのではないでしょうか。たる


最後に:観光の主役は、実は地元の私たち

旅行の目的はただ「観光地を回る」ことではなく、旅を通じて新しい知識を得たり、人との交流を楽しんだりすることです。特に高齢の旅行者にとって、学び心温まる交流は、旅を深いものにしてくれます。

 福井には、まだ多くの「埋もれた魅力」があります。それらを観光客に伝えるためには、観光案内の方法を少し工夫し、文化や歴史の背景を絡めた「知識提供」の要素を加えることが重要です。これにより、旅行者はただ「見る」だけでなく、**「知る」「感じる」**体験をすることができるようになるでしょう。