☕メルボルン・コーヒーキャピタルを歩く

ひとり旅

——中高年ひとり旅でも楽しめる、香り高いひととき——

「グルメにはあまり興味がない私でも、なぜかカフェだけは気になった」
それがメルボルンの不思議なところです。街を歩けば、どこもかしこもカフェ。出勤前の人、観光客もみんな、手にカップを持って歩いています。そして早朝からオープンしているお店も少なくない・・・。

コーヒーキャピタル」と呼ばれるのは伊達ではなく、どうやら**“お気に入りの一軒を持つ”のがメルボルンの常識**らしいのです。朝8時前でもテイクアウトの列ができる光景は、日本ではなかなか見られません。


◆バリスタの技に魅せられて

訪れたカフェの中でも印象的だったのが、ドラマ『ソロ活女子』にも登場した《スモールバッチコーヒー》。
外観は煉瓦造りで倉庫のような印象。実際麻袋のコーヒーが重ねてありました。何を頼もうか、やはり「フラットホワイト」にしようか迷っていたら、カウンターの女性が「日本人の方は酸味の強くないものが好まれます」と日本語で話され、ストレートコーヒーをいただくことに。後にも先にもメルボルン で飲んだコーヒー(いわゆるブラック)はこれ一杯でした。味はなんとも「豆本来」というか生き物、というか生鮮食料品という印象。大袈裟かもしれませんが、生きている植物をいただいているという感覚がとても感じられました。カップも厚手で持ちやすく、とても野趣を感じました。

カップを返すと「いかがでしたか?お口にあいましたか?」と先ほどの女性に聞かれました。「とても美味しかったです」と返答。そういえば、母国でもこんなやりとりはあまりしない私。何気ない会話の大切さを実感したひと時でした。

もう一つ忘れられないのが《ルーン(Lune)》です。
クロワッサンが評判の店ですが、ここで見たフラットホワイトづくりには思わず見入ってしまいました。
バリスタがミルクを泡立て、白い筋を描くように注いでいく。その一連の動作が芸術のようで、しばらくカップを口にできなかったほど。
帰国後、自宅で眠っていたミルク泡立て器でまねしてみましたが、あのきめ細やかさには到底届かず——。
「泡」一つにしても、奥深い文化があるのだと感じました。


◆フラットホワイトとマジック

滞在中、私は胃の調子を気にしつつ「フラットホワイト」ばかり飲んでいましたが、途中で“マジック”という聞き慣れない名前を発見。
調べてみると、リストレット(濃いエスプレッソ)にミルクを注ぐ、メルボルン発祥の飲み方なのだそうです。
同じコーヒーでも、少しずつ味も香りも違う。地元の人たちはそれを敏感に感じ取って楽しんでいるようでした。私はマジックを数回試してみましたが、 正直、ちがいがよくわからず彼らの繊細さを実感しました。


◆抹茶ブームとカフェ文化

意外だったのは「抹茶ブーム」。ガイドブックには数年前からメルボルンでブームが起こっているとは記載されていて、実際、日本でも世界の抹茶ブームのおかげで品薄であることは目の当たりにしてはいましたが、
どのカフェにも抹茶スイーツやドリンクがあり、若い人に限らずたくさんの人たちが行列したり、カフェを利用している姿をよく見かけました。
マーケットやストリートでは「マーケットレーンコーヒー」など有名ブランドのグッズも人気で、ロゴ入りのトートバッグを持つ人もちらほら。

カフェは午後になると早々に店を閉めるところも多く、「朝と昼にしっかり楽しむ」文化なのかもしれません。
中にはバリスタを目指して留学してくる人もいるそうで、なるほど、と納得。


◆ひとりでも、心が満たされる時間

メルボルンでは、コーヒーが単なる飲み物ではなく、**「暮らしの一部」**に感じられました。
誰かと話さなくても、カップを手に一息つくだけで、街の空気と自分の時間がしっくり噛み合う。
ひとり旅の途中でも、そこに座ればもう孤独ではない——そんな優しい場所でした。さらに、定員との何気ない会話のやりとりや笑顔を交わすことで、この街にスーッと入って行けたような嬉しさをひとときでも味わうことができたのです。

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