🌍(長坂真護とSDGs)長坂真護とは――ガーナの電子ゴミから生まれるアート

文化・アート

「アートで世界を変える」と言い切るアーティストがいる

数年前、私は大阪で開かれた長坂真護(ながさか・まご)さんの個展を訪れました。
その日はトークショーもあり、ぜひ生の声を聴きたいと思って足を運んだのです。

会場に入ると、まずその迫力に圧倒されました。
鮮やかな色づかい、重厚な質感、そしてその奥にある“現実の重さ”。
派手なのに、どこか胸をざわつかせる。
それもそのはず――彼の作品は、アフリカ・ガーナのスラム街「アグボグブロシー」で
集められた電子機器の廃材から生まれているのだとか。


💻「電子ゴミの墓場」から生まれる希望

ガーナでは、先進国から廃棄されたパソコンやスマートフォンが
山のように積み上げられ、「電子ゴミの墓場」と呼ばれている。
燃やされる基板やプラスチックの煙は有害で、
現地の人々は危険な環境で生活している。

私は正直、彼の活動を通じてしかこの事実を知りませんでした。

長坂さんは、そんな場所に足を運び、現地の若者たちと出会った。
そして思い立ったのが、**「アートを通して雇用を生む」**という取り組み。
廃材を作品の素材に変え、売上の一部を現地に還元する――

雇用を生み、環境を改善し、学校を造る・・・。
これを彼は「サスティナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」と呼んでいる。

この言葉は彼がまだ画家として名を成していない頃、パリで知りえたのだという。

当時、画家として食べていけるほどでなく、彼は「転売ヤー」で暮らしていた。そして友人から「テロの影響で今パリは人が少なくて買い付けに有利だ」と聞き、パリに出向き、大量のブランド品を購入して免税の手続きの列に並んでいたのだという。そこでたまたまであったLAの女性から「サスティナブル・キャピタリズム」という言葉を聞いたのだと話してくれた。

自分の転売という行為が、誰かの環境を破壊しているかもしれない、という想いもあり、かれはガーナに行くことになる。

また、同時に、ガーナには「アパレル」のごみも大量に廃棄されていた。

これは、「寄付」という名のもとに集まった大量の衣服・・・。

さばききれなくて廃棄されている現実を目の当たりにする長坂。

それらの事実から彼が社会活動を行っていくのだった。

「捨てられたものにも、再び命を吹き込む」
その信念が、アートの枠を越えて、ひとつの社会運動になっている。


✨芸術だけでなく、経営の視点をもつ人

私が訪れた展示会でも、彼の作品はかなりの高額でした。
小さな作品でも10万円以上、大型のものは数千万円から1億円を超えています。今、日本の貨幣の価値は残念かがら下がっていますがそれでも田舎であれば家一軒ゆうに手に入るような価格なのです。
会場ではわたしのような一般のアートファンだけでなく、投資家風の来場者も多くみられ、
その場で商談をしている姿も目にしました。

「アート=純粋な表現」というイメージを持っていた私には、
少し驚きでもあり、新鮮でもあった。

長坂さんはアーティストでありながら、経営者でもある。また、ちゃんとそこを包み隠さず公言しています。
アートで得た利益を社会に循環させ、
ガーナに学校や工場を建てるという“ビジネスモデル”を作り上げている。
つまり彼は、「きれいごと」だけでは世界を変えられないことを知っている人なのです。


🪶「お金は汚い」ではなく「使い方に意味がある」

かつて私は、「芸術家はお金の話をしない」という先入観を持っていました。
でも、彼の活動を知るうちに考えが変わっていきました。

俳優の片岡鶴太郎さんや、芸人から画家になったジミー大西さんたちも
「時給換算したら驚くほど低い」と語ることがあります。
小説家の世界でも、「契約時にお金の話をするのは下品」と言われているようです。これは、以前、これまた拝聴した林真理子さんの講演会でうかがいました。通帳に振り込まれて初めて正確な金額を知りえるのだとか(今は秘書やアシスタントがいますし、これは昔の話かもしれませんが)

けれど、お金を“汚いもの”と遠ざけていては、
社会は動かないし、誰も救えない。
長坂さんはそのことを、実践を通して教えてくれているように思います。


🌈アートは「生きる力」

長坂真護さんの活動を知っていると、
「芸術=遠い世界のもの」ではなく、
「生きる力のひとつ」だと感じるようになります。

廃材も、過去の失敗も、人から見捨てられたものも、
見方を変えれば新しい価値に生まれ変わる。
それは、人生そのものに通じるメッセージではないだろうか。


🔍まとめと次回予告

ガーナの電子ゴミから始まったこの挑戦は、
今では世界中で注目される社会派アートプロジェクトになった。
そして彼の作品は、単なる“美術品”ではなく、
「問いかけ」や「希望」を内包した“メッセージ”なのだと思う。

次回は、そんな長坂さんが見せた
「芸術とお金のリアル」について書きたい。
1億円の絵を前にして考えた、“お金と芸術”のほんとうの話——。

長坂真護さんの個展(金津創作の森美術館)の案内はこちら

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