はじめに:なぜ今「コストコ出店基準」を福井目線で読むのか
福井県には、いまだ“本家”コストコは存在しません。しかし近県の石川・野々市倉庫店では、平日でも福井ナンバーが目立つと言われ、実際に「福井県民の来店比率は約4割では」と噂されるほどの人気ぶりです。また、福井市北部の商業施設エルパには、コストコ公認のセレクトショップ「COSTCO GO」も登場し、地域の消費行動に目に見える変化が起きています。
では、コストコの“本家”はどんな基準で出店しているのでしょうか?そして、福井はその基準に対してどれくらい近いのか。この記事では、専門家やコンサルでなければ難しそうに見える**「商圏の人口分析」「10km圏の人口算出」**を、中高年の方でも理解できるステップで紹介します。
第1章:コストコが最も重視する「10km圏・50万人」の意味
コストコの国内での代表的な出店基準は次の3つとされています:
- 半径10km圏内に人口50万人以上
- 敷地面積 25,000㎡以上の確保
- 高速インターや主要幹線道路へのアクセスが良いこと
● なぜ「10km圏」なのか?
車社会のアメリカ由来のコストコですが、日本でも「10km圏」は“30分以内で行ける距離”の象徴です。郊外型施設は「休日に家族で行く」ことが前提のため、生活圏の広さ=商勢圏の広さとなり、大きな影響力を持ちます。
● なぜ「50万人」なのか?
コストコは巨大な倉庫店を作るため、利用者数が安定しないとビジネスが成り立たないという側面があります。50万人とは“人口のボリュームゾーン”を示し、単に人口密度というより、
「来店し続ける層が十分に存在するか」
を示す指標と考えられています。
福井県全体の人口は約74万人。そのため、県中央部にだけ注目すると、単独で50万人に届くことはありません。しかし、周辺自治体を巻き込む形で広域商圏を形成できる地域は、十分に可能性がありそうです。
第2章:10km圏の人口は“誰でも”調べられる
実際に10km圏の人口をどうやって調べるか。これは専門家しかできなさそうに見えて、実は次の3ステップで誰でも行えます。
① 中心地点を決める(例:福井駅)
商圏分析の基本は「どこを中心とするか」。今回は県都の福井駅を中心に計算します。
② 半径10kmの範囲に含まれる町丁(ちょうちょう)を拾う
地図上で円を描き、その範囲に入る「住所の単位=町丁」を一覧化します。これは手作業でも可能ですが、無料ツール(Google Mapsの測定機能等)を使うと精度が上がります。
③ 各町丁の人口を合計する(国勢調査データを利用)
総務省の「jSTAT MAP」や各市町の人口統計ページで町丁別人口が公開されています。それを合計することで10km圏人口が算出できます。
● 10km圏を手作業で拾うのが“普通”
実は多くの民間コンサルも、AIではなく手作業+GISツールで円内の町丁を拾っています。地味ですが確実で、精度の高い方法として今も主流です。
第3章:福井駅を中心に10km圏を描くとどうなるか
● 含まれる主なエリア
- 福井市中心部〜東西南北の広い範囲
- 永平寺町(西側の一部)
- 坂井市(丸岡南部・春江の一部)
- あわら市の南端
- 鯖江市北部
この広がりを見ると、福井は「単独で人口が少ない」ように見えても、広域で見ると実は“面としての人口”がしっかりあることがわかります。
● 暫定推計:福井駅10km圏人口(概算)
この記事では概算として、各市の町丁人口をサンプリングし、そこから面積比で推計すると…
おおむね 33〜37万人程度
となる可能性が高いと見られます(精密に計算すればさらに近い値になります)。
50万人には届きませんが、コストコの実際の出店は「絶対条件50万人」ではなく、交通条件や地域の特性によって調整されている事例も多く存在します。
第4章:では、福井県で最適な出店候補地はどこか
実際の商圏分析から、福井県内で可能性がある地点を考えると次のようになります。
候補A:福井北IC周辺(広域交通の中心)
- 10km圏人口:福井市北部+坂井市南部+永平寺町の人口を取り込める
- 北陸道・中部縦貫道の結節点
- エルパ周辺の商業集積が強い
候補B:福井南スマートIC構想エリア
- 県央の新しい交通拠点
- 越前市・鯖江市からのアクセスが向上
- 敷地確保が比較的しやすい
候補C:敦賀市周辺は“魅力的だが人口が不足”
敦賀は交通の要衝ですが、県が変わる方向(滋賀・京都)に商圏が流れるため、10km圏50万人には遠いのが実情です。
第5章:福井の商業の現在地 ―「COSTCO GO」が示すもの
2024年、福井市の大型商業施設「エルパ」にコストコ再販店 「COSTCO GO」 がオープンしました。ここが注目されるのは次の理由によります:
- 若い世代を中心に来店が多い
- コストコの人気商品(パン・スイーツ・冷凍・日用品など)を“少量で”買える
- 県内の「他県流出」を止める目的が読み取れる
- 会員登録や年会費は不要
これは、福井県民の消費行動の変化に対し、商業施設側が非常に敏感に反応していることの表れといえます。
終章:人口×交通×消費行動から読む、福井の可能性
福井は単独で50万人商圏を形成するのが難しく、「都市人口の論理」だけで見ると不利に見えます。しかし実際には、
- 交通の構造(高速網・スマートIC)
- エリア全体の生活圏
- 他県への購買流出
- 若い世代の消費傾向
これらを総合すると、福井の商圏は想像以上に“面”で広がり、潜在力が高いことがわかります。
何より今回の作業で実感するのは、専門家でなくても、正しい手順を踏めば商圏人口の計算は“誰でもできる”ということ。記事を読んだ方が、地元の未来を少し違う角度から見られるようになれば幸いです。
著者の個人的な感想
これまで私は、純粋に「コストコがもっと近くにあれば便利なのに」という目線で考えていました。しかし、調べてみると、企業として勝算のない場所に出店しないのは当然であり、実際に専門家の見立ても「福井出店はかなり難しいだろう」というものでした。
その一方で、会員登録なしで利用できる再販店(セレクトショップ)が増えると、「では会員のメリットはどこにあるの?」と、正直少し複雑な気持ちにもなります(もちろん価格や取扱量は本家と異なりますが)。
今回の記事は、数字を扱う部分もあり、若干“空想”に近い部分もあります。それでも、自分の住んでいる地域を「商圏」や「人口構造」という目で眺め直すきっかけになり、福井の街の見え方が少し変わったように感じました。自分が暮らす場所を、地図の上で丁寧に見つめ直してみるのも、なかなか楽しいものです。


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