■ 長坂真護×GLAY TERU トークショー ― 月に誘われた森(後半)

文化・アート

✦ 全身で月に誘われた越前和紙の大作

会場には落ち着いた空気が流れていましたが、その中には確かな期待の熱が潜んでいました。
とくに、長坂さんが最初に
「テルさん見たくて来た人?」
と問いかけた瞬間、客席のあちこちで一斉に手が挙がり、その熱が形を持って立ち上がりました。
長坂さん自身もその景色が嬉しいのか、終始どこか弾む表情を見せていました。

一方で、ステージに佇むTERUさんは、音楽のライブとは別の静けさをまとっていました。
GLAYのボーカルTERUではあるけれど、自らも絵を手掛けるアーティスト特有の集中と、言葉を選ぶ丁寧さがあり、会場の空気が自然とそれに引き寄せられていくのがわかりました。

長坂さんも言っておられましたが「単に、歌手が絵も描きましたというようなものを超越した迫力と熱量がある」とTERUの作品からは感じられるそうです。

前日から福井入りしたというTERUは、長坂さんと一緒に作品をみて、「月」の作品が
照明に浮かび上がるその絵を見つめながら、
絵のある部分を指さし、
「ほら、ここにまごくんがいるよ」
と、まるでそこに本当に息づく人物を見つけたかのように語りました。彼の顔は本当に無邪気で本当に絵が好きな人の顔だった、と長坂さんは言います。
長坂さんの作品に流れる物語を“内側から”感じ取るようなその視線は、
アーティストとしての直観そのものだったとのことで、
私にとっても静かに胸を打つ思いがあふれました。

会場からの質疑応答

トークショーに戻ると、会場からの質疑応答の時間が持たれました。

ファンにとってはまさに夢のようなひと時です

最初の質問は
「GLAYとして来るときと、今日のようにアーティストとして来るときではどう違うのか」
という素朴なもの。TERUさんを愛してやまないという10代くらいの青年からの質問です。
TERUさんはふっと静かに笑いながら、
「GLAYで来るときはボーカルなので、お酒が飲めないんです」
「運転も、GLAYのときはしませんが、今日はマネージャーを横に載せて運転しました」
と率直に答え、会場には柔らかな笑いが広がりました。普段、コンサートでは聞けないエピソードで、当たり前ですが、プロとしての矜持がうかがえました。

続いて、会場から長坂さんへの質問。
「クリムトの影響を受けていると聞いたがきっかけは?」
長坂さんは、実家に飾られていたクリムト『接吻』の複製を見て“花が咲くような気持ち”になったといいます。
のちにヨーロッパを放浪しているなかで、本物を見るためウイーンへ行くほどの強い衝動につながったことを話しました。
また、今日のファッションについても聞かれ、「万博でクラゲ作品を作った際、
そのクラゲをイメージしてセーターを選んだというエピソードも披露し、会場を和ませました。どうやら勝負服のようです。

これからどう生きるかを示唆した二人

時間は押していましたが最後に農業を営む男性からの質問に焦点があたりました。
「自分は土地改良もせず、こだわりの農法を取り入れているが、周りから様々な心ない言葉を受けることがある。お二人は批判されたときどうするか」という率直な質問には、
TERUさんがまず静かに応じました。
「自分にもそういう場面がこれまでもあった。その時、そう言ってくる相手がどういう気持ちで否定しているのか、表面的ではなく奥を考えるようにしている。
想像力をふくらませて受け止めるようにしている。」
その言葉には、先ほど絵の前で見せた“内側を感じる”姿勢がそのまま重なっていました。

長坂さんは同じ質問に対し、自身の経験を振り返りながら、
「僕もめちゃくちゃ言われます。(廃材を集めて作品にすることなど)こんなの芸術じゃない、とか、(ガーナのスラム撲滅に対し)アフリカビジネスだとかたくさん言われます。
最近はまずありがたく受け止めるようにしている。また、そうなりたいと思っている。
キレる時間がもったいないから、“ありがとうございます”と」
と語り、会場には深い共感の空気が流れました。今両者とも成功してみえますが、彼らのこれまでの道、これからの道が決して平坦ではなかったことがうかがえました。

昨日で来たばかりという本個展の図録の話題になると、テルさんはそのページをめくりながら、「すごい時代になったね、今開催されている個展が図録になるんだね。」と言いながら「ぜひ、この本を手に取ってほしい。そして、彼が10年後どうなっているのか見てみたい、見比べてほしい」
と言いました。
さらに、長坂さんの活動を応援することに対しては
「過去の巨匠の絵も素敵だけれど、今を生きている人を応援したい」
という言葉が続き、その場にいた多くの人の心に残ったようでした。
彼の穏やかな声の奥に、個展を前にした“熱”が確かに宿っていました。

私も本当は質問したかったのですが、
会場から出る質問がどれも率直で誠実で、
その流れに身を委ねるうちに、今日は聴く側に徹するのが自然だと感じました。

森に佇む輝く月

トークショーが終わり、会場とお二人の記念撮影が終わり外へ出る頃には夜がすっかり深まっていました。私は夜の野外展示を見に暗い道を歩いて行き作品を鑑賞しました。ムーンライトが煌々と輝いているのを確かめて帰路につきました。

今回のトークショーは
長坂さんの赤い情熱と、TERUさんの静かな青い炎を見たような気がしました。
その二つの火が私の胸の中でゆっくりと揺れ続けていました。

ファン同士の交流

駐車場への道の途中、同じGLAYER(GLAYのファンのこと)の方に声をかけていただき、しばらく興奮をわかちあいました。県外から来られたという彼は「自分のところへも来てほしい」と今回のイベントを羨ましそうに語っておられました。

森の中に高揚した足取りの長坂氏をみつけました。

これからも彼の活動から目が離せないな、と思ったひと時でした。

コメント