“福井が息づく”チラムネアニメ化。著者トークショーで語られた裏話も紹介

テレビ・映画感想

先日行われた「千歳くんはラムネ瓶のなか」著者・裕夢先生のトークショー。
ここで明かされた「実はスポーツ万能だった」という意外すぎる素顔や、
“できるやつはガンガンいけ”というチラムネらしい青春観、
そして「プロットを立てない」「キャラが語り出したら書く」という創作論が、
アニメの完成度の高さと驚くほど自然につながっていきました。

今日はその気づきと感動をまとめてみたいと思います。

熱量の高い会場

トークショーは100名あまりの観客。私が驚いたのは男子率の高さ。この本の読者層を知らなかったのでとても新鮮でした。登壇を待つ間も、展示された資料や、作品への想いを書くカード作成コーナーの設置など工夫が凝らされ、熱気がむんむん。

私は早く会場に着いたので、開場まで30分くらい列に並んで待ちましたが、早くからどんどん人が集まってきていました。それだけ期待の高さがうかがわれました。

■ トークショーで判明した著者の“意外な素顔”

今回のトークショーは、参加者から事前に寄せられた質問をもとに話を展開していくというパタンでした。90分の間に10あまりの話題を展開していかれましたが、個人的に最も驚いたのが、


裕夢先生が実は野球を9年間続けていたほか、マラソン大会はずっと1位だったというスポーツ万能少年だった事実

あれだけの文章を書いておられるし、進学校に進んでおられたことはわかっていたので、私は“頭の良い文系少年”というイメージを勝手に抱いていたのですが、完全に意表を突かれました。

また、現代国語はいつも満点だったとか・・・。

子供のころから父が読書家で壁一面に書物があるような環境だったことから自らも読書が好きに・・・。

ーーあ、千歳くんに重なる。

私が妙に腑に落ちたトーク内容の数々でした。こういうエピソードってともすれば「嫌味に聞こえる」危うさがあるのですが、まっすぐに事実としていえる。聴いていても腹落ちする。千歳くんを文字だけで見ていて想像している以上に実像として感じることができる時間だったわけです。

先生自身のこの小説への想いをうかがうと、

  • がむしゃらに頑張ることは恥ずかしいことじゃない
  • 「できない人・弱い人」を優しく励ます作品は多いが、
     “頑張れる人が頑張っている” 小説を書きたかった
  • 何より「自分が一番読みたい青春小説」を書く

といったことが響いて来るのでした。

これこそがチラムネの世界観そのものなんですよね。


■ アニメの風景が“本物すぎる”。地元民は思わず前のめりに

まず、アニメを観て真っ先に感じたのは 背景描写の凄まじいリアリティ
福井の街の光、建物の形、空の色——どれを取っても本当にそのまま。

地元民としては「あ、あそこだ!」と何度も口にしてしまうほどで、
“ミセスグリーンアップルのMVで福井ロケ地が話題になった”あの感覚に近い、
いやそれ以上に、日常の風景が愛おしくなるアニメだと感じました。

聖地巡礼したくなる作品、という表現がここまでしっくり来るアニメも珍しいです。


■ キャラが“わかりやすくなっている”。原作勢にも新規にも優しい設計

アニメ版で驚いた点のひとつが、
ヒロインたちの性格や立ち位置が最初から理解しやすいこと。

原作の段階では「この子はどういう気持ちで動いているんだろう?」と
最後の方まで掴み切れなかったキャラがいたのですが、
アニメでは表情や声のニュアンスで自然と伝わってくる。

さらに担任教師を通して、
キャラの背景や物語の補足が丁寧に挟まれており、
原作未読の人でも迷子にならずに進める構成になっています。

脚本面ではベテラン・荒川稔久さんからのアドバイスもあったそうで、
確かにカット割りやテンポの“観やすさ”が段違いです。



■ 創作スタイルは「キャラが語り始めたら書く」

さらに興味深かったのが創作論。

ひろむ先生は、

  • プロットは立てない
  • 登場人物が「降りてきて」語り始めた瞬間から書き始める

という、いわば“キャラ主導型”のスタイルを採っているそうです。

チラムネの自然な会話劇、
キャラ同士の空気感のリアルさは、
このやり方だからこそ生まれているのだと深く納得しました。


■ アニメから原作に入る人が増えている現象

トークショーで挙手が行われましたが、
アニメ化後にチラムネを知った人が予想以上に多い という事実に驚きました。

しかも、参加者の男性多め。
チラムネは“青春×リアル”の描き方が特徴ですが、
アニメ化によって新しい層に明確に届いていると実感しました。

原作ファンが「わかるわかる」と頷ける一方で、
アニメ初見勢が「原作読んでみたい」と思える——
これこそ成功したアニメ化の証だと思います。


■ 一気見する価値あり(Abemaの無料公開は残りわずか)

トークショー直後に一挙放送されていたのを幸いと、私は5話を一気見しました。6話公開までしばらく間が空いていたことも幸いです。

原作ファンの期待に応えつつ、
新規視聴者にも開かれたつくり。
そして、福井の風景の美しさ。

この作品は、もちろん、恋愛やスポーツもありますが、メインは高校生の心の内面を詳細に描くというややむずかしい世界観を持っているので、アニメ化がうまく行くかどうか私は勝手に心配していました。でも、それは杞憂だったようです。

アニメが原作の世界観を絶妙に表現しつつ、小説を読んでいないものも引き込む、というバランス感覚の良さは、著者が深く制作に関わっているからこそ生まれたものだと感じます。

なお、Abemaの無料公開はあと数日とのこと。
まだ観ていない方はぜひ急いで!


■ まとめ

  • アニメの福井描写がリアルで美しい
  • ヒロインやキャラが“わかりやすく”説明されている
  • 担任教師の補足や脚本の工夫がさりげなく丁寧
  • 著者の青春観がそのまま物語の芯になっている
  • “できるやつはガンガンいけ”という哲学がチラムネの魅力
  • アニメから入る新規ファンが増えている
  • 男性ファンが意外と多いのも特徴
  • Abemaで一気見できる(無料はあとわずか)

アニメ『チラムネ』は、原作ファンにも未読勢にもおすすめできる作品です。
青春の光と影、そのリアルな温度を映像で味わいたい方はぜひチェックしてみてください。

「千歳くんはラムネ瓶のなか」の原作はこちら

動画を視聴するにはこちら(Amazonプライム)

小説の内容についての過去の記事はこちら

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