「日本刀ってマニアの世界でしょ?」
かつての私は、そう思っていました。
でも、2025年。
今、日本刀は密かに注目を集めています。
展示が全国で次々と開催され、“日本刀イヤー”と呼びたくなるほどの盛り上がり。
きっかけは、テレビ番組『マツコの知らない世界』。
日本刀を愛しすぎてイギリスから日本に移住したお二人の熱い語りが、多くの人の心を動かしました。
その放送を見たとき、私の胸にも静かなざわめきが走ったのです。
国宝なのに少ない?──意外と知られていない日本刀の現状
意外かもしれませんが、国宝に指定されている日本刀は全国でもごくわずか。
その貴重な刀剣の多くが、名古屋の徳川美術館で展示される予定です。
また、人気ゲーム『刀剣乱舞』の10周年を記念した特別展示も全国各地で開催されるとのこと。
ファンはもちろん、歴史や美術に興味がある方にとっても、見逃せない一年になりそうです。
「武器」じゃない──職人たちがつくる“総合芸術”としての日本刀
「日本刀=武器」というイメージが強い日本。
でも、実際の展示を目の当たりにすると、その印象は大きく変わります。
刀身の美しさに加え、「拵(こしらえ)」と呼ばれる刀装具の装飾には、職人の繊細な技が凝縮されています。
現在開催中の「日本国宝展」(大阪市立美術館)では、特に拵に注目した展示が登場。
鞘師(さやし)、漆芸師、彫金師、金具師など、複数の職人が一振りの刀を仕上げていく姿は、まさに“総合芸術”。
静かに、それでいて力強く語りかけてくる美しさが、そこにはあります。
“今”を生きる日本刀──現代刀工の挑戦
刀剣は、過去のものではありません。
現代の刀匠たちが伝統技術を継承しながら、今の感性で生み出す作品も数多く登場しています。
伝統と革新が共存する“今の刀”は、まさに現代アートのよう。
展示されているその一振りが、「いま、この瞬間にしか見られない作品」だと思うと、感じ方も変わってきます。
心がふと、動いた瞬間
私はもともと美術館が好きで、東京や京都まで足を運ぶこともありました。
特に刀剣展の静けさと張り詰めた空気が好きで、ガラスケースの前で過ごす時間は、日常から少し離れた特別なものでした。
でも、忙しい日々の中で、その“好き”を少しずつ忘れていたようです。
そんなとき、ふと見たテレビ番組が、あの気持ちをそっと呼び戻してくれました。
「また、見に行きたいな」
そう思えたことが、私にとって大切な再発見でした。
興味がない人にこそ、のぞいてほしい世界
「刀剣の知識がないと楽しめないのでは?」と思っていませんか?
でも、心配いりません。
今の展示は、丁寧な解説付き。
刀の名前や歴史を知るだけで、世界がぐっと広がります。
「これが本当に武器だったの?」と思わず見入ってしまう装飾美。
ただ“きれいだな”と感じるだけでも、十分価値があるのです。
“好き”なものに、もう一度出会いに行く
年齢や立場が変わると、かつて夢中だったものが少しずつ遠くなっていきます。
でも、心がふと動いたその瞬間に、もう一度手を伸ばしてみるのも悪くありません。
2025年──全国で日本刀の展示が相次ぐこの年に、久しぶりに美術館に行ってみようと思います。
“好きだった気持ち”に、もう一度会いに行くために。
そんな一年を過ごしてみるのも、きっと素敵な体験になるはずです。