女性の柔軟性を目の当たりに〜異世代交流と新しい挑戦を生む eスポーツ体験〜

旅・おでかけ

 先日、私たちは初の試みとして中学生が主導する「eスポーツ体験会」を開催しました。このイベントには、世代を超えた交流を目的に、初めてeスポーツに触れる人々も含め、多くの方に参加していただきました。中学生が主体となり、企画運営をしたことで、彼らがこれまで縁のなかった異なる世代の方々に対して教えたり、交流の輪を広げたりといった場面が見られ、彼ら自身にも大きな学びがあったのです。しかし、私は違った発見がありました。それは、「新しい挑戦に対する敷居の低さ」という点において、女性の方が柔軟に参加しておられたということです。

中学生によるeスポーツ体験会の開催とその背景

 この体験会では、「ゲームは子どもの遊び」という固定観念を取り払うことも目指しました。eスポーツは今や国内外で急成長している分野であり、年齢や性別に関係なく楽しむことができるスポーツです。しかし、年配の方々にとってはまだまだ新しい概念であるため、参加には少しハードルがあるように見受けられました。そんな中、「よくわからないけど、まずはやってみよう」という姿勢を見せてくださったのが女性の参加者たちでした。

女性が新しい体験に積極的に参加できる理由とは?

 とおりがかった知り合いの女性に「一度試してみませんか?」と声をかけると、最初は「できないかも…」と尻込みしていたものの、いざ始めてみると子供たちの説明を素直に受け入れ、少しずつ操作を覚え、最後には笑顔で「楽しかった!」と話してくれる姿が印象的でした。対照的に男性の方は参加をためらう傾向が強く、参加者が少なかったのです。

 こうした「新しい挑戦に対する柔軟性」について、心理学的な研究でもエビデンスが示されていることがあるようです。一般的に、女性は未知の体験に対して「まずは試してみる」という行動傾向が強いとされます。これは、コミュニケーションにおいて相手からのサポートを受け入れる意識が高いからとも言われており、その結果、学びの場や新しい技術に対する挑戦がしやすくなると考えられます。

新しい挑戦が異世代交流に与えた効果

 年配の女性がeスポーツ体験会に参加し、子供たちと一緒に楽しんで学ぶ場面がいくつも見うけられました。そこでは、ゲームの操作に戸惑いながらも、中学生が一つひとつ丁寧に教えると、少しずつ慣れていく様子がみてとれました。終了後、どの参加者も満足そうな表情を見せてくれ、会場にいた人たち皆が笑顔になった瞬間でした。この光景は、ゲームという「文化」そのものが世代を超えて交流を深めることができるということを実感させてくれました。

 実は、こうした女性の柔軟な姿勢が異世代交流を実現しやすくするのです。中学生にとっても、ただ自分が得意なことを楽しむのではなく、他者に教える中で学びが広がる場面が生まれ、より深い理解や気づきを得ることができました。eスポーツという未知の領域を通じて世代間の壁を超えることができたのです。


チャレンジに対する性差

 新しいことに挑戦する姿勢において、日本の男性に限らず多くの国で、性別による違いが観察されています。ただし、日本において特に男性が「新しい挑戦を避ける傾向」が強いようです。理由は、文化的な背景もあると考えられています。ここで、いくつかの心理学的・社会的データや、諸外国との比較をもとに解説します。

新しい挑戦に対する性別による傾向:日本と諸外国の比較

 まず、男性が新しいことを受け入れることに対して慎重になるのは日本だけではありません。たとえばアメリカ、イギリス、ドイツなどの先進国においても、女性の方が新しい経験や挑戦に対して積極的であることが多いとされ、男女間でリスク回避やチャレンジ精神に差が見られることは多くの研究で示されています。しかし、日本では特にその傾向が顕著であることが指摘されています。

データによる違い:性別と挑戦意識

 心理学者のジーナ・リプトン(Gina Rippon)らの研究によると、性別に関わらず、未知の状況に対する警戒心やリスク回避は文化に依存する傾向がありますが、社会的な役割や価値観がその意識に影響を与えます。特に、日本の男性にとって「失敗を恥じる文化」「社会の期待に沿うこと」が大きなプレッシャーとなり、積極的な挑戦や新しい体験に対して慎重になる傾向があるのです。

 具体的なデータとして、内閣府が行った「社会活動における挑戦意識」調査によれば、男性は社会的地位や年齢が上がるにつれて新しい挑戦に対して消極的な姿勢が強まる傾向が見られます。対照的に、女性は年齢を重ねても新しい体験に前向きである傾向が高く、特に40代以降からその傾向が顕著になります。

挑戦に対する慎重さと「形」を重んじる傾向

 日本社会の伝統的な価値観の一つに、「形(かたち)を重んじる」文化があります。これは、立場や役割を重視し、期待される行動や態度を大切にするという風潮です。このような価値観の下では、新しいことに失敗するリスクを避けようとする傾向が生まれやすく、特に年配の男性にその傾向が強く見られます。結果として「恥をかくかもしれない」という不安が強調され、挑戦に対する意識が後退するのです。

 また、このような心理的障壁については、イソップ物語の「狐とブドウ」の例が象徴的です。手が届かないブドウを「どうせ酸っぱいだろう」と自ら評価を下してしまうように、日本の男性も「自分には向かない」「無理に挑戦する必要はない」と考える傾向が強まります。こうした認識は、日本特有の「和を重んじる文化」や「集団内での役割意識」も影響しているとされています。

他国の文化との違い

 欧米諸国と比べると、例えばアメリカやイギリスでは「失敗は成功の一部」と捉え、挑戦することそのものを価値とみなす文化が根付いています。スタートアップ精神が広く奨励されているアメリカでは、男性も女性も新しい分野に挑戦することが多く、特に中高年の世代でも学び直しやキャリア転換が一般的です。一方、日本では中高年層になるほど安定性が重要視されるため、新しい挑戦が「リスク」よりも「恥」や「評価低下」に結びつきやすい傾向があると言われています。

最後に:柔軟な挑戦姿勢が生む学びと交流の場

 今回のeスポーツ体験会でも、中高年の女性が積極的に挑戦することで、世代を超えた学びと交流が生まれました。異なる世代や背景を持つ人々が共に新しいことに取り組むことで、固定観念や偏見も和らぎます。こうした柔軟な姿勢こそが、個人だけでなく社会全体にもポジティブな影響をもたらすのです。

日本においても、年齢や性別に関わらず「まずはやってみる」気持ちを持つことが新しい交流を生み、未来への一歩につながります。

新しいことに対する挑戦には、多少の不安がつきものですが、それを乗り越えることで得られる経験や成長は大きなものです。皆さんもぜひ、「まずはやってみる」という一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか? 新しいチャレンジが、思わぬ喜びや学びをもたらしてくれるかもしれません。

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