**行き当たりばったりが連れてきた、東京の新しい歩き方

グルメ

──皇居周辺・清澄白河で見つけた“現代と江戸のあいだ”を旅する3日間──**

毎年のように上京しているのに、じつは東京で“街歩き”らしい街歩きをしたことがありませんでした。
行くところといえば、美術館や有名スポット。あるいは用事を済ませてホテルへ戻るだけ。特に中高年になると人混みはちょっと疲れるし「東京で何をしていいのか、どこへ行けばいいのか」迷うところでした。

これまでの私は計画なしに旅をする、ということがありませんでした。

ところが今回、ふと気がゆるんだのかあえて計画を立てずに行ってみたら──驚くほど楽しかったのです。「予定を詰め込まない」旅が、こんなに心地よいとは思ってもみませんでした。

■ 1日目:懐かしさが静かに戻ってきた日

到着初日、ホテルに荷物を置いて、まだ日が落ちていない午後。約20年ぶりに最高裁判所のそばを歩きました。

冬に晴れているというのは、北陸住みの私たちにとってはご褒美のようなもの。じっとしていられなくてあてもなく散歩をすることにしたのです。

青みを帯びて、華美な装飾の無い建物である最高裁では以前訪れたときの説明が、散歩の途中でふっと蘇りました。最高裁の外壁の美しい石はたしか茨城県産だったような・・・、と、思わずスマホで検索。ビンゴ。茨城から運ばれた「稲田石」が、長い年月を経ても凛としてそこにあったのです。

テレビではみたことがありますが、国会議事堂や衆参両議院、国立国会図書館など、どれも国の中枢にふさわしい堂々たる建物で、道路の広さもあいまって気づけば充実した散策に。予定を何も立てない1日目が、すでに“当たり”でした。

特に、せっかくの平日だったこともあり、念願の「国立国会図書館」へ初めて入館。実はオンラインで資料を取り寄せたことは過去にありますが、今回は実際の建物に入って、図書カードまで作ってしまいました。

吹き抜けの広い閲覧室のほか、地図の部屋、科学の部屋などたくさんの資料があり、今度は目的をもってこよう、と心にきめました。それでも、資料検索の端末がさわってみたくなり、地元のタウン誌を検索したところ、ちゃんとでてきました!感激です。

ホテルは皇居周辺にとっていたので歩いてもどります。衆議院も参議院も見学可能らしく、これまた次回のお楽しみができました。


■ 2日目:清澄白河、ゆるやかに流れる時間

2日目に今回の旅のメインの用事を済ませると午後、荷物をまとめ移動しました。

この旅でいちばん印象的だったのは、清澄白河の宿「LYURO」。

部屋に入った瞬間「わー」と歓声がもれ、水辺の景色に心奪われました。
このホテルはいわゆるシェアハウス。私たちの部屋は独立したつくりですが、リーズナブルな共用の部屋もあります。室内はベッドと小さな机と洗面台だけ。テレビもありません。ミニ冷蔵庫やコーヒーカップなどはありました。とてもシンプル。トイレもシャワーも廊下をでてすぐの共用なのに、むしろその使い勝手がちょうどよく、館内の動線もすっきり。水辺に面した静けさも手伝って、あまりの快適さに自分でも驚いたほどです。

さらに衝撃だったのは、カードキーをうっかり忘れて部屋に戻れなくなり、エレベーターホールに“軽く軟禁”されたこと。
でもそこにはしっかりフロントへの電話が置かれていて、助けてもらえました。こういう経験も含めて、この宿はちょっぴりクセになりそうです。ちなみにカードキーはチェックインの際に発行されるのですが、ほかの宿泊階には立ち入れず、セキュリティは万全だと感じました。


● 夜はワイン醸造所のレストランへ

 今回、結構無計画な中で唯一、食事の予約をしたのは「フジマル醸造所」のディナー。

こんなに街中でワインを作っておられるところがあると知ったのはコンピューターのおかげです。ホテルから徒歩20分程度ですが、この辺りでは当たり前の距離。私たちも天気に励まされて早めに向かいます。

階段を3階まであがり飲食スペースへ。

ワインは国産を中心に、今まで味わったことのないものがずらり。この日は全国のワインを500円で味わえるというフェアをやっていて、私たちも二人違うものを楽しみました。

料理はおしゃれ。これまた、3種類ほどをオーダーし、シェア。予約すればコースもいただけるようです。ついついいろいろ頼んでしまうので、お財布にはそこまで優しくないかもしれませんが
それでも、味はおいしいし、たまにはこんな若い人たちが集まる店もいいなあ、と思いました。ワインの興味はつきませんが、かつて私は出先でも家でもワインで酔いすぎるという失敗を数回しでかしているので、この日は2杯だけにとどめ、ホテルへの帰路の「力」をとっておきました。またワインを味わいに行きたい、今度はレストラン利用者に開放しているという製造エリアも見てみたい、と思いました。

■ 3日目:江戸と現代と、そしてパンダ

● 清澄白河の朝は、ガラス張りのカフェで始まった

 翌朝。ホテル併設のレストランで軽く朝食をとったあと、清澄庭園へ向かいました。歩いている途中で見つけたガラス張りの素敵なカフェに誘われて、また寄り道。カフェオレにエスプレッソ・ショットを足してもらうと、まるでフラットホワイトのような味わいに。
つい、ヨーグルトとフルーツのモーニングプレートまで頼んでしまい、すっかり長居してしまいました。

この“予定外の寄り道”が旅のリズムをゆるめてくれるのです。

下町を堪能「深川江戸資料館」

清澄白河は深川にも近く、江戸の記憶が街のあちこちに息づいています。現代のカフェ文化と深川の暮らしの歴史が同じ温度で並んでいる──この“静かな共存”がたまらなく心に響きました。

深川江戸資料館は原寸大の江戸の下町を再現しており、細かいディテールまで凝っていました。また、一日を15分で表現し、夜になったり夜明けが来たり、とそのたびに町の様子が変わります。「昔の夜ってこんなに暗かったんだ」と思ったり、火事への備えとして荷物の少なさや収納の知恵などもてんこ盛り。ガイドさんの説明もとても楽しかったです。壁に飾って展示してある浮世絵のパネルでは、「あ」、国立国会図書館デジタル、とあるではありませんか・・・。ますます、またあの図書館への再来の願望が生まれました。

帰りにエントランスで見た横綱・大鵬の展示も懐かしく、子どものころの記憶がじわっとあふれます。ところで。大鵬ってどのくらいの年齢のかたがご存知なんでしょうね???


● 深川めしを求めて歩き、釜飯にたどりつく

お昼は地図アプリで目星をつけたお店で深川めしを食べようと思いむかいます。

しかし、午後1時半くらいでなんと閉店の看板が・・・。売り切れでしょう。
そこで、気を取り直し近くの釜飯のお店に入り、深川めしと深川丼を注文。同行者とシェアしました。簡単にいえば、たきこみごはんか、ぼっかけか、という違いですね。

私、ふだんは一人旅が多く、どうしてもたくさんの種類の料理を食べることはできないのですが、今回は両方たべられてよかったです。両方食べたい方はそういうメニューもあります(結構ボリューミーです)。
こちらのお店、量も味も大満足で、どちらの料理にも本当にたくさんのアサリが入っていました。テーブルにラップが置いてあるのも細かい気遣い。私たちも炊き込みの方を少し持ち帰らせてもらいました。


● 念願のブルーボトルコーヒー

午後は、旅の目的のひとつだったブルーボトルコーヒーへ。

実は東京の、しかも下町の知識がほとんどない私ですが、「清澄白河」という何とも清らかな印象の地名を知っていたのはこのカフェを通じて。

あれはもう10年ほど前でしょうか、アメリカの有名なカフェが初めて海外進出する先が、この「清澄白河」だったと、当時、ニュースや情報番組で大々的に取り上げられていました。

このカフェはその後、大阪店もできたようで、そちらは経験していたものの、清澄白河は初めてです。

なぜかちゃんと調べたことがなく、ずっと北関東とかそちらの方だと思い込んでいたら、実は「清澄白河」は都心からすぐの下町エリアだったというわけです。

さて、店内は混んではいましたが、ラッキーにも大きなテーブルで椅子が2つあいており、場所が確保できました。

カフェは広くて天井が高く、まるで工場跡地のような開放感。白を基調にした空間は、依然訪ねたメルボルンのカフェを思い出させます。

雪国在住としては、こんな建物、素敵だけど光熱費がかかるだろうなあ、といらぬ心配をしつつ、それよりも勝って明るさがとてもここちよくて「ああ、こういう“余白”のある空間が好きだったんだ」と思い出させてくれました。

テーブルの向かい側ではアングロサクソンの親子が楽しそうに過ごし、ユニセックスの清潔なトイレ、静かな客層──そのどれもが、街の“成熟したおしゃれ”を感じます。


そして帰路前、上野動物園へ。

 動物園には「清澄白河」から大江戸線で直通。

 不忍池を見ながら動物園エントランスには3時ころに到着しました。

 今日はパンダ一択です。ついに、日本にいるパンダはここの双子だけになってしまいましたね・・・。

 オスの方はスムーズに観覧できましたが、雌の方は看板には「50分待ち」とありました。双子なのに、どうしてこんなに人気が違うのかよくわからないところですが、メスのパンダさん、実際は30分と少しくらいで入れ、感動の対面。
 入った瞬間「えー」という声がどこからか漏れたのは、完全に、彼女が“背中”を向けて座っていたから。それでも、ちゃんと起きていて盛んに竹を食べていました。咀嚼するたび、ほんの少しですが、お顔が見え隠れ・・・。背中は「Uネック」の黒いセーターを着ているよう。それすら愛おしく、妙に納得してしまうから不思議です。

また、おまけ?で最近なぜか話題のハシビロコウも近くだと知り少しだけ「拝みに」。

やはり微動だにせず、妙に納得して動物園を後にしました。上野公園を通り抜けJRの駅に向かいますが、ここは何度来ていても迷子になりかけて、しまいには足が痛くなりちょっとだけ焦りました。西郷さんの近くの広場でクリスマスマーケットが開催されていましたが、心に余裕はなかったので、そのまま駅舎をめざします。駅舎が見えたときの安心感は、なんとも言えませんでした。


■ 行き当たりばったりの旅が教えてくれたこと

 2日目の用事では各地から集まった参加者と雑談をする時間があり、一緒に参加した人たちの中には用事が終わっても私たちのように延泊する方がいて、聞けば都心でそのまま宿泊し、バスツアーで「浅草へ」「スカイツリーへ」と意気揚々。
 その会話の段階では無計画な自分、しかも宿を変わることに一瞬だけモヤっとしたけれど、結果的に、今回の“ざっくり旅”は大・大当たりでした。

行きたい場所を一つだけ決めて、あとは街にゆだねる。
中高年の旅は、このくらいのゆるさが心にちょうどいいのかもしれません。


■ 機内誌に載っていた福井のページ

 行きかえりの飛行機では、機内誌に福井の特集が6ページ掲載されていました。知ってはいるけれど、きちんと情報が整理され、素敵な写真が添えられてるページを丁寧に読みながら、「地元のこと、ちゃんと説明できる人になりたいな」と静かに思いました。
東京で“街の物語”に触れたことで、今度は地元の史跡にも目を向けたくなったのです。


■ おわりに

予定をたてない旅は、何が起こるかわからない。
でも、その“わからなさ”こそが、年齢を重ねた今の私にはじつに心地よかった。

皇居周辺、清澄白河の水辺、深川の下町、現代のカフェ文化。
江戸と令和が、メルボルンで感じた空気感とも重なっていく。

今回の旅は、
「東京って、ただ歩くだけでもこんなに面白いのか」
という発見と、
「地元ももっと歩いてみたい」
という新しい目標を、そっと置いていってくれました。

参考にした本はこちら


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