本を置く場所がない
それが、私が普段本を買わない、とても現実的で残念な理由のひとつです。 だけど、それ以上の動機がある私は、もっぱら図書館派。あてどなく棚を眺めて、思いもよらない一冊に出会う「図書館の意外性」が、私の日常にはちょうど良い。「おためし」もできる、読めなくても罪悪感がない。背伸びもできる・・・。
けれど、今回のニューヨーク旅行は別でした。
無職になるかもしれないという足音がすぐ後ろで聞こえ、一円単位の支出にさえ罪悪感を抱きそうになる今、私は迷わず2冊のガイドブックをレジへ運びました。しかも、同じ本が図書館にあると確認しながら。
正直に言えば、最新の情報なんてAIに聞けば0.1秒で返ってきます。 物価、地下鉄の乗り方、お洒落なカフェの場所。調べつくして、私のスマホはすでに情報という脂肪でパンパンです。
それでも、紙の束が必要でした。 私にとってガイドブックは、目的地へ行くための地図というより、現地と自分を繋いでくれる「トンネル」のような存在です。あるいは、自分の立ち位置を確認するための「チャート」と言ってもいいかもしれません。
【まっぷる ニューヨーク (まっぷるマガジン海外))※「まずは王道の全体像(チャート)を叩き込むために選びました」と一言添える。
絵本作家「鈴木のりたけさん」に出会う
先日、テレビ(あさイチ)で絵本作家の鈴木のりたけさんの特集を見ました。 彼が描く「手術室」の場面。そこには、何百本ものメスや計器が、逃げ場のないほどの密度で描き込まれていました。
実にアナログな作業と圧倒的なプロフェッショナリズム。 番組の中の鈴木さんは、終始本当に楽しそうにお話をされていました。 自分の仕事が好きで、働いている自分が好きで、それを誰かに話すことが好き。 画面越しに伝わってきたのは、そんな「好き、好き、好き」のオンパレードでした。
「無職」という言葉がちらついている今の私だからでしょうか。 自分の「好き」を全うしている鈴木さんの姿が、どうしようもなくキラキラして見えたのです。
「私も、ああなりたい」
私は、旅行が好きです。 私は、働くことも好きです。 そして、大好きな旅行をするために一生懸命働く、自分のことも好きでいたい。
私が本当に知りたいのは、ガイドブックが「絶景」と呼ぶ場所の、すぐ後ろにある誰かの日常です。 5番街のショーウィンドウを眺める時、私は「何を買えるか」ではなく、そこにある「狂気のような美意識」をどう自分の血肉にするかを考えたいと思っています。
AIが「効率的」と切り捨ててしまうような、無駄で遠回りな路地裏の匂いを、自分の鼻で確かめたいのです。
これを「現実逃避」と呼ぶ人がいても、構いません。 私は、この2冊のガイドブックを「踏み台」にして、まだ誰も、そしてAIですら言語化していないニューヨークを、天邪鬼な視点で探しに行こうと決めています。
それは、いつかまた鈴木さんが描いたような熱い「しごとば」へ戻り、「好き好き好き」の自分でいられる場所へ帰るための、私なりの静かな儀式なのです。
一生ものの投資
普段は本を買わない私が、あえて重い本をカバンに詰め込んだ。 それは、この旅を「単なる消費」ではなく「一生モノの投資」に変えるという、自分への誓いでもあります。
▼ 私の「好き」を再確認させてくれた、圧倒的な現場の記録
【鈴木のりたけ『しごとば』】 ※働くことへの愛が詰まった、大人のための特効薬です
▼ 違う角度から街の輪郭をなぞるために、あえて2冊。
▼ ガイドブックに載っていない「あまのじゃくな発見」を書き留める相棒
【お気に入りのペン】 ジェットストリーム 3色ボールペン 0.28mm
狭い余白にも、私の本音を細かく刻める極細ペンは必須です

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