ここ数年、私は地域で行われている蛍観察会のお世話をしています。初めて関わったときは、ただ「きれいだな」と見とれていた蛍の光ですが、年を重ねるにつれて、その小さな光が語る自然のこと、環境のこと、人の暮らしとの関わりについて、より深く考えるようになりました。
■ 減っている?変わりゆく蛍のすがた
地域の方々からは、「昔より蛍が減ったね」とよく言われます。たしかに、以前は川沿い一面に光が舞う“群舞”が見られたという話もあります。今ではそこまでの数は見られません。
その背景には、小川の護岸がコンクリート化されたことや、河川敷の除草のタイミングが影響しているとも言われています。蛍の幼虫は水のきれいな川にすみ、カワニナという巻貝を食べて成長します。彼らの命のリズムに合わせて草が残され、農薬が控えられ、水が守られていなければ、蛍の命は次の年につながっていきません。
それでも、今年も──
日が沈み、空が群青に染まる頃、ちらり、ちらりとあらわれる光。
ふわりと舞って、草むらに消えていく。
数は多くなくても、蛍はたしかに「ここにいるよ」と、やさしく存在を伝えてくれます。
その健気な姿に、思わず胸が熱くなる瞬間があります。
■ 蛍があらわれる条件とは?
蛍(ゲンジボタル)は、以下のような条件がそろうと姿を見せてくれます。
- 時期:例年、6月上旬〜中旬がピーク(地域差あり)
- 時間帯:午後8時〜9時頃が最も見頃
- 気温:20℃以上の蒸し暑い夜
- 天候:風が弱く、雨が降っていない日
- 場所:農薬の少ない、水のきれいな小川や湿地帯
自然条件に大きく左右されるため、予想が難しいのもまた蛍観察の醍醐味。訪れる日によって数がまったく違うこともあります。
■ 観察会の夜
私たちの蛍観察会は、事前に簡単な解説を行い、ライトを最小限にして静かに観察に向かいます。子どもたちの「いたー!」という声や、大人の「昔を思い出すねぇ…」というつぶやきが、薄暗い川辺にやさしく響きます。
地域の人々が集い、自然の命と触れ合う時間。たった一晩の出来事でも、誰かの記憶に長く残るかもしれない──そんな思いで、毎年この会を続けています。
■ 自然保全の大切さを実感
蛍の命は短く、環境の変化にとても敏感です。だからこそ、彼らが今年も姿を見せてくれることは、「この地域にはまだ、命をつなぐ環境が残っている」という小さな希望でもあります。
「人の暮らし」と「自然」がともにある風景を、これからも守っていけるように。蛍観察会は、そうした想いを分かち合う場でもあります。
■ 蛍をうまく写真に撮りたい方へ
「写真に撮ってみたいけれど、うまく写らない……」という声もよく聞きます。実際、蛍の撮影は簡単ではありませんが、工夫次第で幻想的な一枚を残すことも可能です。
▶︎ 初心者向け・撮影のポイント
- 三脚を使ってしっかり固定
- シャッター速度を5〜30秒に設定(長時間露光)
- ISO感度は800〜1600程度に
- ピントはマニュアルで無限遠に設定
- フラッシュは使用しない
- ライトの使用は最小限に。赤いセロハンをかぶせると◎
▶︎ おすすめの機材とアプリ
- カメラ:Canon EOS Kiss M2、Sony α6400 など
- スマホ機種:iPhone 12以降、Google Pixelシリーズ
- アプリ:Slow Shutter Cam(iOS)、Camera FV-5(Android)
特にスマートフォンのナイトモードは進化しており、近年は手軽に蛍の光を写せるようになってきています。
今年の蛍は、何を語りかけてくれたでしょうか。
また来年、同じ場所で、小さな光と再会できますように。