「芸は身をタスク」を信じて。40年の事務経験と、ある知人が教えてくれた「自分を守る勇気」

足元が崩れたあの日。私が味わった「地獄」

人生には、それまで信じてきた足元が音を立てて崩れる瞬間があります。

昨年末、私は長年勤めた職場の更新が叶わず不採用を告げられました。年明けに届いた通知を手に、そこから約2ヶ月間、私は言葉通り「地獄」のような時間を過ごしました。

無職になる恐怖、途絶える収入への不安。そして何より、これまでのキャリアを丸ごと否定されたような、耐えがたい自己肯定感の喪失です。4カ所受けて3カ所から届く不採用通知に、私はいつの間にか人間不信に陥っていました。「自分には、もう価値がないのではないか」と。

しかし、ようやくたどり着いた新しい職場で、私は予想もしなかった形で「自分」を取り戻すことになります。

20年前の「遺産」が繋いでくれた、確かな自信

新しい職場でのミッションの一つは、ホームページの担当でした。引き継いだのは、20年ほど前に誰かが作り上げた「タグ(HTML)」が剥き出しの、極めて原始的な構成。しかし、説明を聞いた瞬間、私の中に眠っていた「何か」が目を覚ましました。

  • 「あ、このタグを書き換えればここが変わるんだな」と構造が即座にわかる。
  • FTPソフトを使ったファイルの転送手順が、体で覚えている。

いつ、どこで習得したのかも定かではない、40年余りの事務職人生で触れてきた断片的な知識たち。それがパズルのピースのようにカチッとはまり、周囲からも「そんなことまで分かるんですか!」と驚かれました。

その時、心の底から思ったのです。**「ああ、私は伊達に40年も働いてきたわけじゃなかった」**と。

鏡の中の自分を見るような、ある知人の「決断」

そんな私のもとに、先日、ある知人から連絡がありました。専門職として現場を支えてきた彼女もまた、今、大きな人生の岐路に立っています。

彼女は非常に生真面目な性格です。周囲が家庭の事情を優先する中、すべてのしわ寄せを一人で受け止めてきました。直前まで決まらないシフト、多様なニーズへの対応。責任感という細い糸一本でつながっていた彼女の心は、とうに限界を超えていました。

彼女はついに、自分を守るために「退職」を申し出ました。私は「よく頑張ったね」とねぎらいましたが、決断した後の彼女を襲ったのは、解放感ではなく、あの日の私と同じ「無職になる恐怖」でした。

「試着」すらためらう不安。でも、あなたはもう戦っている

一緒に買い物へ出かけても、以前なら楽しんでいた洋服の試着すら「今はそんな贅沢をする身分じゃないから」とためらってしまう彼女。その姿は、数ヶ月前の私そのものでした。

一度立ち止まると、社会から切り離されるような感覚に陥り、周りの励ましも耳に届かなくなります。でも、その「怖さ」を感じるほど、彼女はこれまで誠実に、必死に働いてきたのです。

彼女は立派な国家資格を持っています。しかし、今この瞬間の彼女にとって、何よりも価値があるのは資格ではなく、**「自分を壊してしまう前に、NOと言えたこと」**そのものです。不条理な環境に耐え続けることは「強さ」に見えますが、本当に必要な強さは、ボロボロになった自分を救い出すために「もう無理です」と旗を振ること。彼女は、自分自身の人生を守るという、最も難易度の高いタスクを成し遂げたのです。

芸は身を「タスク(仕事)」として助けてくれる

「芸は身を助ける」と言いますが、あなたが無意識に積み重ねてきた経験は、いざという時にあなたを支える強力な「タスク(実務)」へと姿を変えます。

私を救ったのは、目に見える資格ではなく、40年間の現場で培った「勘」でした。かつて私を評価しなかった場所もありましたが、面接の数十分だけで、誰かが積み上げてきた年月をすべて推し量ることなんて不可能です。

新しい環境では、自分のカラーを出しすぎない「匙加減」に悩むこともあるでしょう。それでも、あなたの中にある「積み重ね」は、誰にも奪うことができない唯一無二の財産です。

結びに:再出発を願うすべての人へ

服を一着選ぶことすら怖くなる夜があっても大丈夫。その不安は、あなたが誰よりも一生懸命に生きてきた反動に過ぎません。

資格がなくても、華やかな肩書きがなくても、あなたが現場で悩み、動かし、身につけてきた指先の感覚を信じてください。少し休んで、また歩き出せるようになったとき。あなたが守り抜いたその「心」と「技術」を、本当に大切にしてくれる場所が必ず見つかります。

まずは自分に「お疲れ様」を。そこから、新しい物語が始まります。

コメント