『成瀬は天下を取りにいく』から始まった一連のシリーズが、3作目『成瀬は都を駆け抜ける』で見事に完結しました。
滋賀県を舞台に彗星のごとく現れ、舞台化まで果たした超人気シリーズ。地元・滋賀の方々はもちろん、全国の読者が彼女の動向を見守ってきました。
読了後、寂しさを覚えつつも胸に湧き上がってきたのは「ここで終わらせたのは、間違いなく作者の英断だった」という強い納得感です。
今回は、成瀬シリーズ完結の凄みと、ファンとしてどうしても膨らんでしまう「成瀬あかりの将来」についての妄想を綴ってみたいと思います。
なぜ「3作目」だったのか?京都を書き深めない美学
人気シリーズになればなるほど、続編を望む声は強くなるものです。大学生活、社会人編……とダラダラ引き延ばすこともできたはずです。
しかし作者の宮島未奈氏は、成瀬あかりという人物の「青春の密度」が最も高い瞬間、すなわち高校時代から大学への一歩を踏み出す瞬間で、綺麗に物語の幕を閉じました。
特に印象的だったのは、舞台が京都に移ってからの描写です。
千年の歴史を持つ京都という街は、あまりにも奥が深く、安易にディテールを書き込もうとすると観光案内のような浅さに陥るリスクがあります。作者はそこをあえて詳細に書き込みすぎず、あくまで「成瀬あかり」という軸と、学友らとの関係性を物語の中心に据え続けました。
最後の最後で幼馴染の島崎みゆきを登場させ、「成瀬あかり史」の目撃者として物語を収束させたテクニック。キャラクターが消費され尽くす前に、最も愛されている状態で作品を完成させた引き際の鮮やかさには、ただただ脱帽するばかりです。
【勝手な未来予想図】大人になった成瀬あかりは何をしている?
作品としては完璧な形で完結しましたが、読者の心の中で成瀬の人生は続いています。
彼女が進学先に選んだのは「理学部」でした。 第1話で描かれたシャボン玉の実験のように、成瀬にとって科学とは「自分の興味を論理的に検証する手段」です。
では、そんな理系脳と圧倒的な実行力、そしてブレない滋賀愛を持つ彼女は、将来どんな仕事に就いているのでしょうか?
私が勝手に思い描く「成瀬の未来」はひとつしかありません。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロジェクトマネージャー
成瀬あかりは、きっと宇宙を目指します。
かつて福井県の高校生が開発した「サバ缶」が宇宙食として認証されたように、成瀬なら絶対に「滋賀と宇宙」を結びつけるプロジェクトを立ち上げるはずです。
- 近江牛や鮒ずしを宇宙食化する研究
- 琵琶湖の水質浄化技術を宇宙ステーションに応用する開発
「そんなの前例がない」「地域おこしと宇宙開発は別物だ」と難色を示す周囲の大人たちを、彼女は理学的なデータと圧倒的なロジックでぐうの音も出させず納得させてしまうでしょう。
種子島からロケットが打ち上がるその日。大津のパブリックビューイング会場でハラハラしながら画面を見つめる島崎と、コントロールセンターでいつも通り無表情に指図を出している成瀬——そんな光景が目に浮かんで仕方がありません。
成瀬あかりは、今日も自分の道を歩んでいる
どんな職種に就いていたとしても、彼女はきっと肩書や社会の常識に囚われず、自分の立てた問いを愚直に検証し続けているはずです。
物語のページは閉じられましたが、「成瀬なら今頃どうしているだろう?」と想像できる余白を残してくれたことに感謝したくなります。
滋賀の街を颯爽と駆け抜けた彼女は、今頃どんな未知の実験に挑んでいるのでしょうか。そんな妄想を抱きながら、改めてこの稀代の名作シリーズの完結に拍手を送りたいと思います。


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