「無職になる」と聞いたとき、まず生活の不安を思い浮かべる人は多いでしょう。
多くの情報も、その不安に焦点を当てています。
私自身も最初は、そういう視点から考えていました。
しかし実際に向き合ってみると、収入のこと以上に直面する課題がありました。
それは「自分をどう説明すればいいのか」という問題です。
このブログ記事は、無職になった感想を綴るものではありません。
これまで“ちゃんとやってきた人”ほど、次の一歩で言葉に詰まりやすくなる理由を整理し、読者の視点で読み進められるように構成したものです。
これといった説明なしでこれた職歴
これまで私は、自分のことを一から丁寧に説明する必要がありませんでした。
常勤として働き、仕事の積み重ねそのものが「信用」になり、それが次の仕事につながってきたからです。
ところが今、その前提が一気に崩れました。
自分を言語化しようとした瞬間、言葉が出てこない。
職務経歴書が書けない。
ボランティア活動を説明できない。
自己紹介ひとつ、まとまらない。
この原因を紐解いていきます。
信用型キャリアとは何か
信用型キャリアとは、資格や専門職能ではなく、特定の組織や人間関係の中で積み重ねられてきた信頼によって成立してきた働き方を指します。
業務は確かに存在していました。成果も出していました。ただしそれらは、職務定義やスキルとして切り出されることなく、「この人なら任せられる」「長くやっているから分かっている」という信用の中に埋め込まれていました。
評価の単位は、仕事そのものではなく、人と人との関係性です。そのため、本人にとっては「何をしてきたか」を言語化する必要が、ほとんどありませんでした。
専門職キャリアとの違い
専門職型キャリアは、資格や職能、再現性のあるスキルによって説明が可能です。どの組織に属していなくても、「何ができる人か」を言葉で示すことができます。
一方、信用型キャリアは、説明よりも関係性で評価されてきたキャリアです。組織の内部では非常に強く機能しますが、その信用は外部には持ち出せません。
この違いは、働いている間には問題になりにくいものです。違和感が表に出るのは、立場を失ったときです。
無職になった瞬間に起きること
無職になることで失われるのは、収入だけではありません。信用が通用していた文脈そのものが消えます。すると、次のような状態が起きます。
・職務経歴書に書く言葉が見つからない
・自己紹介を求められると、急に立ち止まってしまう
・何ができる人なのか、自分でも説明できなくなる
これは能力が足りないからではありません。
信用型キャリアが、組織という土台の上でのみ成立していたという構造が、無職によって可視化された結果です。説明できなかったのは、怠けていたからではない。信用型キャリアの人が自己紹介につまずくのは、準備不足や努力不足の問題ではありません。そもそも、説明する必要がない環境で、長く評価されてきたという事実があります。だから、言葉が出てこなくても不思議ではありません。むしろ、それは自然な反応です。ここから必要になるのは、過去を誇張することでも、無理に売り込むことでもありません。これまで信用の中に溶けていた役割や判断を、一つずつ言葉として切り出していく作業です。
資格もなく、肩書きもなく、説明する言葉がない
教員、看護師、保育士のような分かりやすい資格はありません。
学歴はありますが、今の局面では強みになるどころか、場合によっては扱いにくい要素にもなり得ます。
- 資格で説明できない
- 肩書きでまとめられない
- 「○○の専門家」と言い切れない
こうして並べてみると、
自分には何もないような感覚に陥ります。
でも、ここで一度立ち止まって整理する必要があります。
これは「何もしてこなかった人」の悩みではない
この混乱は、
職歴が薄い人のものではありません。
信用型キャリアの特徴
- 長く同じ領域で働いてきた
- 周囲からの評価や信頼で役割を担ってきた
- 自分を売り込む必要がほとんどなかった
だからこそ、
「自分は何ができる人か」を
言葉にする訓練をしてこなかった
これは怠慢ではなく、構造の問題です。
職務経歴書が書けない理由
職務経歴書が書けないのは、
経験がないからではありません。
「成果」ではなく「役割」で働いてきたから
信用型キャリアの人は、
- 数値目標
- 明確なKPI
- 成果物
よりも、
- 現場を回す
- 人と人をつなぐ
- 混乱を収める
- 継続させる
といった役割を引き受けてきました。
ところが職務経歴書は、
成果・実績・スキルの言語で書くことを求められます。ここに、ズレが生じます。
ボランティア活動が説明できない理由
これも同じ構造です。
「やってきたこと」と「説明できること」は違う
ボランティア活動は、
- 立ち上げた
- 継続させた
- 人を巻き込んだ
という事実があっても、
- 何のために
- どんな役割で
- どんな価値を生んだか
を言語化していないと、
「善意の活動」で終わってしまいます。
説明できないのは、
価値がないからではありません。
翻訳していないだけです。
自己紹介を作り直すときの考え方
ここからは、実務です。
まず「何者か」になろうとしない
最初から、
- 専門家
- プロフェッショナル
- 肩書き
を作ろうとすると、必ず詰まります。
信用型キャリアの人が最初にやるべきなのは、
「私は何をやってきたか」ではなく
「私はどんな場面で機能してきたか」
を言語化することです。
自分を言語化するための3つの質問
以下は、ノート1枚でできます。
いちばん多く頼まれてきたことは何か
- 調整
- まとめ役
- 裏方
- トラブル対応
「評価されたこと」ではなく、
自然に任されてきたことを書き出します。
いなくなると困ると言われた場面は何か
- 急に抜けたら回らなくなった
- 「あなたがいないと困る」と言われた
これは、あなたの実装スキルです。
成果が見えにくいが、確実に効いていた行動は何か
- 空気を整えた
- 継続できる仕組みを作った
- 人が辞めないよう支えた
これらは、言語化されにくいが、最も価値のある仕事です。
「仮の自己紹介」を作る
完璧である必要はありません。
例(たたき)
私は、組織や現場で人と仕事の間を調整し、
物事が止まらずに回り続ける状態を作る役割を担ってきました。
資格ではなく、継続と信頼で仕事を積み重ねてきたタイプです。
これは、肩書きではなく機能の自己紹介です。
ここから先に進むために
今のあなたに必要なのは、
- すぐに戦える武器
ではなく - 自分を過小評価せずに説明できる土台
です。
職務経歴書が書けないことも、
ボランティア活動が説明できないことも、
すべて「翻訳前」の状態に過ぎません。
最後に
資格がない。
肩書きがない。
学歴が扱いにくい。
それでも、
長く現場にい続け、
信用で仕事をつないできた人
にしか持てない視点と力があります。
それを言葉にする作業は、
就活のためだけではありません。
自分を立て直すための作業です。

コメント