溢れる「簡単に稼げる」の正体
SNSを開けば届く、物販やコンサルの熱烈な勧誘。私はある方の動画に反応したことから、lineの勧誘やメルマガなど様々なメディアを駆使しての情報にあふれる日常になりました。
「在庫を持たなくていい」「世界中が市場」「無在庫だからリスクゼロ」……。 環境の変化に不安を感じていた時期、その門を叩きそうになった瞬間がありました。しかし、一歩踏み出す直前、私はある「物理的な現実」に気づき、立ち止まったのです。
物理的な「梱包」という見えない重労働
例えば。物販を考えてみましょう。安く仕入れて海外サイトなどを利用して高く売る。
一見、とても魅力的に思えます。しかし、実際のところはどうなのでしょう?
1. 冷徹な現実:無在庫物販の「見えないコスト」
「在庫ゼロ」を謳うビジネスモデルには、広告では決して語られない「膨大な付帯業務」が隠れています。わたしがSNSで見かけた広告やリール動画では「注文が入ってから仕入れるので在庫を持たなくていい」と謳っていました。しかし、よく考えると、単純に右から左、というわけにはいかないようです。
- 梱包・発送は「全自動」にならない: 注文が入るたびにAmazonやドラッグストアで購入し、それを自分の手で再梱包して海外へ送る……。この「1件あたりの手間」は、在庫があろうとなかろうと1ミリも減りません。
- 「検品」の責任: 届いた商品に不備がないか、液漏れしていないかを確認し、海外の荒い輸送に耐えられるよう、より頑丈に、より丁寧に梱包する。この「神経を研ぎ澄ます作業」は、想像以上に体力を削ります。
- 知的リソースの浪費: 長年の勤務や人生で培った判断力を、「プチプチで包む作業」に費やすのは、戦略的に見て最大の損失(機会損失)です。
「在庫ゼロ」と言っても、注文が入れば自分で商品を確保し、検品し、段ボールを組み立て、丁寧に梱包して発送する。その事実に変わりはありません。
私が自問自答したのは、その作業を想像した時でした。 「40年近くののキャリアを経て、私がこれからの人生でやりたいことは、ガムテープを貼る作業に追われることだったのか?」
たとえ在庫リスクがなくても、私の「時間」と「体力」という、最も貴重な資源が削られることに変わりはない。これは、私が求めていた「精神的な避難所」や「知的な自立」とは、別の場所にある労働だと確信しました。
「やらないから稼げない」という呪文に負けない
この手の副業ノウハウを教えるスクールの勧誘では、よくこう言われます。
「本気じゃないからいつまでも現状からぬけだせないのだ」
「努力が足りないから稼げないのだ」と。
しかし、わたしたちのような大人の副業において大切なのは、努力の量ではなく「努力を投下する場所」の選別ではないでしょうか。
自分の体力、そして残された貴重な時間を、誰にでも代替可能な単純作業に投下してしまうのは、戦略的な敗北ではないでしょうか。若い世代と同じ土俵で「作業量」を競う必要は、私たちにはないのです。
「モノ」ではなく「知恵」を届ける道を選ぶ
もちろん、需要と供給を結ぶ物販のお仕事は必要とされている方が多くいてビジネスとして成り立っていることは否定しません。やったらやった分成果はでるかもしれません。
気持ちがちょっとぐらついたのも事実です。ただ、「私にはちょっと合わないな…」と感じたのです。
というわけで、毎日山ほど来るメルマガ(順繰りに同じような内容が毎日きます)とlineを強制シャットアウトし、物販という甘い罠への未練を断ち切った今、私は改めて自分の足元を見つめ直しています。
私には、長年の事務職の経験があり、それなりに培ってきた専門知識があり、そしてデジタルツールを必死に使いこなしてきた過程があります。これらは、梱包作業では決して得られない、私だけの「資産」です。
梱包も仕入れも不要。自分の言葉と知識で誰かの役に立ち、その対価を得る。そんな、身軽で誇り高い自立を目指すならこれからの残り少ない人生の時間の過ごし方としては素敵だと思えました。この「戦略的な撤退」こそが、私にとっての本当の前進だと信じています。
あなたももし副業やちょっとした働き方を模索しているのであれば、今まで培ってきた知恵や経験を生かせるものにシフトされてはいかがでしょうか。


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