感情と勢いの60代が、コンサル的視点の「設計図」を手に入れる話

「面白そう!」だけで走ってきた私

私は、感情と勢いで動くタイプです。
「面白そう!」と思ったら、まず走り出す。企画書は、走りながら、あるいは走ったあとで書く。今までずっとそうでした。

防災関係の活動仲間と話していると、よく「設計」「準備」「コンサル的に考えると」という言葉が出てきます。
正直に言うと、その実態がわからなくて、必要以上に身構えていました。「私は素人だから」と、ちょっとビビっていたのです。

そんな私が、ある企画をきっかけに、その正体を少しだけ見ることができました。

ある地区の企画で、いちど「崩れた」

きっかけは、A地区での防災に関するワークショップです。

企画者、進行役として実施するのは、これが初めて。
私の中には「支援が必要な人の視点をワークショップに入れたい」という思いがありました。

そこで当事者の方にお話を聞き、専門家にも相談しました。
聞き取り用のレジュメを作るとき、意識したことがあります。

  • 実施してよいかどうかを、まず聞く
  • 当事者の方を「代表」とは考えない
  • 良い点だけでなく、心配な点も聞く
  • 現実に近いかどうかを確認する

私は、企画段階やこれまでの顛末をAIに「告白」して「設計ってどうやってやるの?」と質問して言われたのが、

「企画を通すためのヒアリング」ではなく「企画を壊してもらうためのヒアリング」になっていた

ということでした。
 結果、支援が必要な人の避難は個別性がとても大きく、今回のワークの条件では十分に扱えないとわかりました。企画は組み直しになりました。

「設計」の正体は、線を引くこと

組み直しながら、ずっと耳にしていた「設計」という言葉が、やっと腹に落ちました。

設計とは、面白い企画を考えることではなく、今回は何を扱い、何を扱わないかを決めること。

支援が必要な人への支援は重要です。でも、今回は扱わない。そう決めたことで、企画はむしろ強くなりました。
企画は足し算ではなく引き算。アイデアを増やすより、線を引くことが設計者の仕事だったのです。

「面白そうだからやる」から「今回はここまで」へ。私が初めて引いた線でした。

A4一枚の「企画設計図」

この気づきを、素人の私でも使える様式にしてみました。企画書を書く前に、A4一枚でこれだけ書きます。

  1. 原動力:なぜ気になるのか。違和感や現場での経験
  2. 本当の問い:できるだけ疑問文で書く
  3. 関係者整理:主役、関係者、支援者、行政・専門機関
  4. 成功の定義:知る/気づく/話し合う/行動する/仕組みを変える、のどこまでか
  5. 今回やること
  6. 今回やらないこと
  7. 手法選択:なぜその手法なのか
  8. 成果物:何が残るか
  9. 次の一歩:終わったあと、誰が何をするか
  10. 設計者メモ:企画書には書かないが、自分が気になっていること

A地区版で書くと、こうなります。

  • 本当の問い:A地区において、洪水時に適切な避難先を選択できるか
  • 成功の定義:「気づく」「話し合う」まで。行動変容は求めない
  • 今回やらないこと:個別避難計画、福祉避難所の検討、個別の状況を想定した避難の再現、状況ごとの詳しい検証
  • 設計者メモ:支援が必要な人への支援は重要な課題。今回は条件的に扱えないので除外し、別テーマとして将来検討したい

「やること」より「やらないこと」のほうが、書いていて頭が整理されます。

企画書と設計図は別物

もう一つの発見は、文書は二層に分けるということです。

  • 第一層・企画書:主催者や関係団体に出す文書。目的、対象、日時、方法、タイムテーブル
  • 第二層・設計図:外には出さない、企画者だけが持つ文書

私は今まで第一層ばかり書いていました。専門家や活動仲間は、第二層を見ながら話していたのです。話がかみ合わなかったわけです。

「手段」から「問い」に変わった

もう一つ、私の中で変わったことがあります。
数日前の私の関心は「支援が必要な人の視点を入れたい」という手段でした。今は「個別避難計画は、本当に機能するのか」という問いになっています。

企画を考える順番は、こうです。

  1. 面白そう!と思う
  2. 私は何を知りたいんだろう?と書く
  3. その問いに答える最適な手法を考える
  4. ワークショップか、ヒアリングか、まち歩きかを選ぶ

手法が先ではなく、問いが先。これだけで、企画の迷子になりにくくなりました。

コンサルがすごいのは、頭がいいからではなかった

「コンサル的思考」と聞くと、特別に頭のいい人の技のように感じていました。
でも実際は、整理する型をたくさん持っているということのようです。

「なぜ気になる?」「本当の問いは?」「誰が困っている?」「どこまでやる?」「何をやらない?」。今回の設計図は、それを順番に書き出しただけでした。

そして、気づきました。論理的思考が苦手だったわけではなく、無意識にやっていたけれど、型を知らなかったのだと。
当事者に会いに行く、地域の実態を知っている、地域の事業を知っている。現場の強みは、すでにあったのです。

おわりに

感情と勢いは、捨てなくていいと思っています。
「面白そう!」が企画の原動力であることは変わりません。ただ、走り出す前にA4一枚の設計図を書く。それだけで、走る方向が見えるようになりました。

企画が崩れたことは、無駄ではありませんでした。崩れて、組み直して、初めて「設計」が見えたのですから。

もし「コンサル」「設計」という言葉に身構えている方がいたら、まずは「今回は何をやらないか」から書いてみてください。

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