『ラストノート』最終回予想③――恋愛は「ご褒美」で終わらない。葵が向き合う、空白の15年

前回は、第10話をもう一度見て、澄晴の「自分」について考えてみました。

葵が澄晴を動かしたことは間違いない。でも、絵を描き続ける理由まで葵であってはいけない。

そんなふうに考えると、澄晴が「俺たち、一緒にいない方がいい」と言ったことも、単純な別れの言葉には聞こえなくなってきます。

そして、もう一人。

第10話を見ていて、私はふと気になりました。

じゃあ、葵は?

第10話の葵には「やりたいこと」が見えなかった

第10話の葵は、ほとんど恋愛モードでした。

澄晴とのことを考え、澄晴の言葉に揺れ、澄晴と一緒にいることで、もう一度「香り」を感じる。

それはそれで、とても大切なことだと思います。

でも、私には、葵自身の「これからやりたいこと」が、ほとんど描かれていないように見えました。

会社では自社ブランドの立ち上げという一つの仕事をやり遂げた。

そして休暇を取った。

もともとは、澄晴との恋を忘れるための時間だったはずです。

そして。再びお互いの気持ちを確かめ合う。

でも……。

それで、本当にいいの?

と思ってしまう。

葵にはまだ、「調香師として復帰する」という大きな空白が残っているからです。

「澄晴がいるから」ではなく、「私はどうしたい?」

キャリアの視点で考えると、葵は今、ちょっと面白いところにいると思います。

仕事を失ったわけでもない。

生活に追われているわけでもない。

自社ブランドという、一つの成果も出した。

つまり、次の一歩を自分で選べる「余白」が生まれている。

こういうときに出てくるのが、

「私は、この先どうしたいんだろう?」

という問いです。

「自分探し」なんて言葉、50代になってから使うと、ちょっと痛い(笑)。

でも、だからといって、この問いを避けて通れるわけでもない。

むしろ人生の後半だからこそ、

「私は誰々の妻です」
「○○の母です」
「会社の○○さんです」
「○○ちゃんの親友です」

ではない、素の自分は何をしたいのかを考える時期が来ることもある。

優子の、

「誰かのためって理由がないと動けないのって50の女って感じですごく嫌」

という言葉は、私はかなり重要なセリフだと思っています。

これは、恋愛についてだけ言っているのではないんじゃないか。

誰かのためなら頑張れる。

家族のためなら。

夫のためなら。

子どものためなら。

仕事のためなら。

でも、「自分がやりたいから」という理由では動けない。

それって、ちょっと寂しくない?

という話にも聞こえるんです。

もちろん、誰かのために生きることが悪いわけではありません。

ただ、

「誰かのため」がなくなったとき、自分は何をしたいのか。

これは、一度考えてみてもいい問いなのかもしれません。

そして、奥田は何度も「現実」を持ち込んでくる

ここで、私は奥田(元夫)の存在が気になってきました。

奥田って、二人の恋愛に水を差すだけの存在ではないんですよね。

澄晴が葵を探して会社に来たときも、これまで葵がどれだけの決断をしてきたのか、そしてこれからの決断が人生に関わる重いものになることを、澄晴に突きつける。

そんなふうに、何度も「現実」を持ち込んでくる。

澄晴からすれば、

「好きだから一緒にいたい」

なんです。

そりゃそうだ(笑)。

まだ彼は、葵が生きてきた時間の重さを、同じようには経験していない。

でも奥田は、

「葵の人生はどうなる?」

というところを見ているように感じるんです。

そして、第10話のラスト。

澄晴の「俺たち、一緒にいない方がいい」。

もしかすると、この言葉の中には、初めて「自分」だけではなく、葵の人生を考えた澄晴がいるのかもしれない。

私は、そう思いたくなりました。

澄晴には「自分はどうしたいのか」がある

前回の記事で考えたように、澄晴は今、

「葵がいなくても、俺は絵を描くのか?」

というところに来ているのだと思います。

葵がきっかけだった。

でも、絵を描く理由まで葵であってはいけない。

だから、自分自身の力で絵を描く。

では、葵は?

葵には、

「澄晴がいなくても、私は調香師に戻りたいのか?」

という問いが残っているのではないでしょうか。

ここが、私は面白いと思うんです。

二人とも、相手によって動き始めた。

でも最後には、相手から一度離れて「自分」に戻らなければならない。

そう考えると、このドラマは単なる「50歳の女性の恋愛物語」ではなくなってくる。

「恋愛はご褒美」だけでは終わらない

50歳で、もう一度恋をする。

それはもちろん素敵なことです。

長い時間を生きてきた女性に、恋愛というご褒美があってもいい。

でも、私は『ラストノート』が、そこで終わるドラマではないような気がしています。

葵にとって大切なのは、

「澄晴と結ばれること」

だけではない。

むしろ、

澄晴と出会ったことで、15年間止まっていた何かが動き始めた。

その「何か」が、恋愛だけではないのではないか。

葵が取り戻すのは、澄晴との時間だけではなく、香りだったり、仕事だったり、そして「自分の人生」そのものだったりするのではないか。

そう考えると、「空白の15年」というものの意味も変わってきます。

15年間を澄晴との恋で埋めるのではない。

15年間を生きてきた自分自身を、もう一度見つめ直す。

そのための次のフェーズに、葵も入っていく。

私は、そんな展開が見てみたい。

もしかして、海外へ行くのは葵?

そして、ここからは完全に私の妄想です(笑)。

最終回予告には、パスポートらしきものが出てきます。

これまで私は、当然のように「澄晴が海外へ行く」と考えていました。

でも……。

もしかして、海外へ行くのは葵だったりして?

調香の世界なら、フランスのグラースなど、香水文化の本場があります。

自社ブランドを一つ立ち上げた。

そこで終わりではなく、

「もっと香りを知りたい」
「もう一度、調香師としてやってみたい」

そんな気持ちが芽生えていてもおかしくない。

会社を辞める必要もない。

ほんのしばらく海外に行って、香りの世界に身を置いてみる。

そんな選択だってある。

そして、澄晴が先に行くのか、葵が先に行くのか、同時期なのか。

そこは、もう分かりません(笑)。

でも、二人がそれぞれの場所で、自分自身を確かめる。

そのうえで、また出会う。

もしそんなラストだったら、私はかなり好きです。

二人が「一緒にいる」ために、一度それぞれの人生へ

前回の記事では、澄晴が「自分の力で絵を描く」ために海外へ行くのではないか、と書きました。

でも、もしかすると大切なのは「誰が海外へ行くか」ではないのかもしれません。

澄晴にも、葵にも、

「あなたは、どうしたいの?」

という問いが残っている。

だから、一度それぞれの人生へ戻る。

それは「別れる」ということではない。

むしろ、二人がこの先も一緒に生きていくために必要な時間なのかもしれない。

恋愛だけで相手を支えるのではなく、

自分の人生をちゃんと生きている二人が、一緒にいる。

私は、そんな結末が見たい。

そして、もし最後に葵が海外へ向かうことになったら――。

澄晴には、

「行かないで」

ではなく、

「行ってらっしゃい」

と言ってほしい。

……そして帰ってきた葵に、

「おかえり」

と言うのか。

それとも、二人ともまだ帰ってこないのか(笑)。

最終回まで、あと少し。

ここまで来たら、もう何が起きても受け止めます。

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